2023 Fiscal Year Annual Research Report
新たな構造の解空間を用いた運動論方程式の解の諸性質に関する研究
Project/Area Number |
20K14338
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
坂本 祥太 九州大学, 数理学研究院, 准教授 (10869019)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ボルツマン方程式 / ランダウ方程式 / 解の正則性 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度は全空間上における定常解周りの非切断ボルツマン方程式の初期値問題の解の存在と一意性、および解の時間減衰レートについての研究を行った。これまでの研究では、同様の方程式の解の性質を、トーラス上で定義されるウィーナー空間上で考察した。この空間はフーリエ級数が絶対総和可能な関数全体として定義されるが、ボルツマン方程式の解が持つ質量・運動量・エネルギー保存則によりフーリエ級数の0モードが0になり、低周波部分の評価が不要になることが解析に重要であった。 一方全空間上で類似の関数空間を定めるには、フーリエ変換が可積分である関数全体がなす関数空間を利用するのが適切であることが、級数と積分の類似性からわかる。しかしこの場合低周波領域は1点ではなく空間内の単位球となるため、方程式が持つ保存則のみではこの部分の寄与を制御することができない。この困難を克服するため、フーリエ変換がp乗可積分な関数全体の空間を補助空間として用い、pがある程度大きい場合にこの空間のノルムによって解の低周波領域の大きさのアプリオリ評価を構成することによって、方程式の時間大域解を構成した。さらにアプリオリ評価中に自然に表れる時間重み付き評価から、線形化方程式と同じ時間減衰のレートを非線形問題に対しても得た。この結果はSIAM J. Math. Anal.に掲載された。 研究機関全体を通して、以上のようなフーリエ級数・フーリエ変換の有界性によって定義されるような関数空間を用いた運動論方程式の研究を行った。これらの関数空間は現在多くの運動論方程式の研究に引用されており、一定のインパクトを残したといえる。
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