2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K14345
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
檜垣 充朗 神戸大学, 理学研究科, 准教授 (20868202)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 非圧縮性粘性流体 / Navier-Stokes方程式 / 解の漸近挙動 / 安定性 / スペクトル理論 / 制御問題 / 正則性理論 / 境界層理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
壁面吸引条件の下で,二次元円板外部におけるNavier-Stokes方程式の非対称定常解の存在を証明した(出版済み).空間遠方で良い減衰構造を持つ非対称外力を与えて,解を臨界減衰するベクトル場のクラスで構成した.証明のポイントは,厳密定常解である吸い込み流に着目し,その周りの線形化方程式の基本解を調べることである.実際,自明解の周りの線形化方程式に対応するStokes方程式と比べて,基本解の減衰構造が改良されることが示される.これにより,二次元外部問題に特有の困難であるStokesのパラドックスを解消することができる.また,二次元円板外部におけるNavier-Stokes方程式のある定常解の安定性を証明した(投稿済み,arXiv:2302.02309).臨界減衰する回転流と吸い込み流の線形結合として与えられる厳密定常解について,小さな$L^2$初期擾乱に対する安定性を示した.証明は対応する線形化作用素のスペクトル解析に基づく.さらに,Franck Sueur氏(University of Bordeaux)と共に,流体-構造相互作用の制御問題の研究を開始した.平面流体内を運動する剛体について,その遠隔制御問題を考察する.その際,これまでの本研究課題の遂行により得られた知見が有用であることが分かった.また,昨年度に引き続き,Jinping Zhuge氏(Morningside Center of Mathematics)と共に,ランダム環境における定常Navier-Stokes方程式を考察した.線形化方程式のGreen関数の構成及びその評価などを行い,基礎理論の整備を進めた.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平面流体の数学理論の進展につながる成果が得られたため.まず,非対称定常解の存在に関しては,吸い込み流の存在がStokesのパラドックスを解消する機構となることを指摘した.線形化方程式の基本解の構造が変わること自体は古くから知られていたが,その減衰構造に注目し,二次元外部問題に応用した結果は初めてのものだと思われる.また,厳密定常解の安定性に関しては,初期擾乱に空間遠方の減衰を課す場合は既に示されていた.ただし,その証明は初期擾乱が臨界空間$L^2$に属する場合には適用できないものである.それゆえ,対応する線形化作用素の性質を綿密に調べる必要があったが,その副産物として,吸い込み流が流れの長時間挙動においてある種の安定化効果を持つことを明らかにした.この事実は上述の定常問題における基本解の減衰構造の改良と整合しており興味深い.
|
Strategy for Future Research Activity |
定常解の存在に関する結果の自然な拡張として,指導学生の堀内亮真氏(神戸大学)と共に,無限に長い円柱外部におけるNavier-Stokes方程式の非対称定常解の構成に着手した.上述の吸い込み流が三次元的な流れに及ぼす影響を明らかにすることが重要である.また,厳密定常解の安定性に関する結果を円板が回転する場合に拡張する.ところで,湧き出し流を含む厳密定常解の安定性/不安定性問題は未解決である.吸い込み流を扱った際の計算により,これは非常にデリケートな問題であることが分かっている.そのため,本問題については今後の中長期にわたる課題としたい.さらに,Franck Sueur氏との共同研究について,まず単純なモデルに対して角速度の発展方程式を導出した.この方程式はBoussinesq-Basset履歴力に対応する非局所作用素を含む点を特徴としている.そのために,解の長時間挙動を定量的評価も含めて厳密に解析することは容易ではない.そこでまず,流体力学分野を含む先行研究の精査から始める予定である.また,Jinping Zhuge氏との共同研究に引き続き取り組む.
|
Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症の影響により,予定していた国内外の出張の多くが行えなかったため.主に次年度の出張旅費として使用することを計画しており,例えばFourier Institute(Grenoble, France)で開催されるsummer school "New Trends in Mathematical Fluid Dynamics"等に情報収集のため参加予定である.
|