2022 Fiscal Year Research-status Report
New development of the blow-up theorem for nonlinear wave equations
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20K14351
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Research Institution | Kushiro National College of Technology |
Principal Investigator |
若狭 恭平 釧路工業高等専門学校, 創造工学科, 講師 (60783404)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 非線形波動方程式 / 解の爆発 / ライフスパン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では非線形波動方程式に対して、ポテンシャル項や消散項、あるいは非線形項に様々な因子を含んだ場合の解の爆発解析を行うことが目的である。方程式の非線形項には、未知関数自身やその微分のべき乗のタイプを考察の対象としている。ユークリッド空間における非線形波動方程式の初期値問題に対する一般論の研究は、1980年代から現在にかけて精力的に研究がなされており、解の挙動を理解することが着実に進められている。近年では、物理学上重要な計量を、方程式に導入した場合の解析が活発である。具体例としては、ブラックホールの計量に現れる Schwarzschild 計量や Kerr 計量、膨張する宇宙モデルのde Sitter 空間がある。このような問題は、ユークリッド空間上の問題にほぼ帰着できるのだが、消散性やポテンシャル項、非線形項に様々な因子を含んだ方程式と同等になる。したがって、冒頭で述べた設定の下で方程式を解析することは応用上重要であり、その一般論の構築を目的とする非線形波動方程式のそもそもの研究意義をもっている。 当該年度では、昨年度実施した特性方向の重みを非線形項にもつ波動方程式の研究を踏まえ、様々な非線形モデル(非局所的な非線形項など)に対して解析を行った。特に、解のライフスパン(解の最大存在時間)を得ることを主眼において研究を行った。解の爆発が起こる場合、その解の存在時刻がどのくらいかを調査することは重要である。この解析では、解の各点的な挙動を得ることが本質であり、特に、特性方向の情報を引き出すことが重要である。更にそれは、特性方向の積分の可積分性に着目することになり、低次元空間(1次元、2次元)では初速度の平均がゼロかそうでないかによって線形解の挙動が大きく変化するため、非常に興味深い現象が観察できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度実施した、特性方向の重みをもつ非線形波動方程式の研究は、様々な因子を非線形項にもつ場合の解析で重要な働きをもつ。解の各点挙動が、<t+|x|> と <t-|x|> で表現されているため、これらを一般的な形で非線形項に取り入れることで、様々な非線形方程式の解の挙動をつかむことができる。このことを踏まえ、当初の研究課題のひとつである、ポテンシャル項を備えた問題について、非線形項に影響を与えている非局所的な非線形問題を再度考察した。多項式減衰している初期値については、田中智之氏(同志社大学)との共同研究で最適なライフスパンを導出できたが、コンパクト台をもつ場合については、最適なライフスパンまで到達できていないのが現状である。具体的には、解のライフスパンの上からの導出で問題が発生しており、なぜうまくいっていないのかを再度検証し、研究を行っている。また、具体的な計量や多様体上で方程式を考察する場合も似たような現象が観察されているため、これらの本質的な理解に努めている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、前述の非局所的な非線形項をもつ方程式に対してコンパクト台を持つ場合の解析や様々な計量を導入した方程式などを考察する。解の各点的な挙動をつかむことを主眼におき、ライフスパンの詳細な評価を導出することを目的として、研究を進めていく。
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Causes of Carryover |
コロナの影響により、研究集会参加への国内・海外出張旅費の使用ができなくなったため、次年度に使用する計画となってしまった。
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