2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of super high-density Cerium-based bulk metallic glasses
Project/Area Number |
20K14372
|
Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
Zhao Yong 東京学芸大学, 教育学部, 研究員 (20866230)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 金属ガラス / セリウム / 陽電子 / 高密度ガラス状態 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では高密度金属ガラスの実現に向けて,セリウム系金属ガラスのマトリックス中に局所的に分布する第二の高密度ガラス凝集体に着目する.溶媒元素としてセリウムを用いた様々な多元系金属Ce-Ga-Cu-(Ni)母合金を作成する.作成した複数の母合金を液相から急冷し,金属ガラスを得る.得られた金属ガラスについて陽電子消滅法を推進し,凝集したガラス状態について実験的に知見を得る.第一原理計算により,セリウム原子サイズの観点からより凝集したガラス状態の発現可能性を議論する.初年度にあたる2020年度は,三元系Ce-Ga-Cuと四元系Ce-Ga-Cu-Niについて,様々な組成のセリウム系金属ガラスを作成した.幾つかの試料については,5ミリメートルサイズの良質なバルク材料を得ることができた.加えて,XRDその場測定と高分解能熱膨張計測により,結晶化挙動についても幾つかの知見を得ることができた.2年目にあたる2021年度は,作成した三元系セリウム系金属ガラスCe-Al-Cuと四元系Ce-Al-Cu-Niについて,示差走査熱量測定(DSC)による熱物性評価を推進した.二つの試料ともに,ガラス転移によるブロードな吸熱ピークを示した.これらは室温での長期間エージングを行うことによりシャープになり,転移温度は高温側にシフトした.このことは,金属ガラスの局所構造が室温での長期間エージングにより緩和していることを示している.陽電子消滅寿命測定の結果,二つの試料について250ピコ秒程度の単一成分が得られた.上記二つのセリウム軽金属ガラスには,セリウム結晶の単原子空孔よりもわずかに小さいvacancy-sized free volumeが高密度に分布していることが示唆された.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の内容は,大きく分けてセリウム系金属ガラスの作成と調整, X線回折(XRD)実験,DSCによる熱物性評価,一連の陽電子消滅実験による高密度ガラス状態の実験的探索と第一原理計算による理論的考察である.初年度にあたる2020年度は,様々な組成のセリウム系金属ガラスを作成し,XRDその場測定と高分解能熱膨張計測などによる評価を行った.2年目にあたる2021年度は,作成した三元系セリウム系金属ガラスCe-Al-Cuと四元系Ce-Al-Cu-Niについて,DSCによる熱物性評価に加え,陽電子消滅寿命測定を実施した.二つの金属ガラスについて得られたDSC スペクトルは,室温で長期エージングすることにより明瞭な差異を示した.一方,陽電子消滅寿命測定の結果,二つの試料について250ピコ秒程度の単一成分が得られた.この陽電子寿命は主要構成元素であるセリウムの単原子空孔の陽電子寿命315ピコ秒よりも短く,さらにセシウムのマトリックス中の陽電子寿命197ピコ秒よりも長い.上記二つのセリウム軽金属ガラスには,単原子空孔よりもわずかに小さいvacancy-sized free volumeが高密度に分布していることが推測される.当初想定していたセリウム結晶よりも高密度な領域は,陽電子寿命測定により検出することはできなかった.しかしながら,ガラスの局所構造あるいは熱力学的特性が室温での長期エージングに影響されることが判明した.このことはセリウム高密度領域が熱力学的に準安定であり,エージングや不純物に影響されていることを示唆して.以上より,2年目に計画していた実験データは十分に取得できただけでなく,セリウム高密度領域の議論も行うことができたと言える.現在までの達成度は,計画通りに進展していると判断する.
|
Strategy for Future Research Activity |
これまで作成したセリウム系金属ガラスのマトリックス中には,セリウム結晶の単原子空孔よりもわずかに小さいvacancy-sized free volumeが高密度に存在することが陽電子寿命測定により示されてきた.最終年度にあたる2022年度は,これまで作成したセリウム系金属ガラスについて,同時係数ドップラー広がり測定を推進する.vacancy-sized free volumeの近傍元素の情報を得ることが目的である.陽電子が消滅するサイトの電子密度の情報を得るために,陽電子寿命測定も併せて推進する.陽電子寿命測定と同時係数ドップラー広がり測定により得られたデータを基に,高密度セリウムガラス状態に関連した局所構造を実験的に考察する.上記二つの陽電子実験に加えて,第一原理計算も推進する.ここでは,ガリウムを含むセリウム系多元系金属ガラスにおいて,ガリウムのchemical pressureが非局在化したセリウム4f軌道を誘起することに着目する.4f軌道の非局在化の効果により,凝集体中でセリウム間距離が減少し,高密度セリウムガラス凝集体が第二のガラス状態として発現する可能性を調べる.これらのデータをもとに,高密度ガラス状態がガラスマトリックス中に導入される可能性を議論する.平行して,ガラス転移温度と結晶化温度を明確にし,glass forming ability(ガラス形成能)に関する知見を得る.その一方で,ガラス状態を維持するために重要なファクターは熱物性データ以外にも様々ある.本研究課題では,結晶化挙動における不純物の影響などにも言及する予定である.不純物の効果を調べるために,FeやCoをわずかに導入した四元系セリウム軽金属ガラスとしてCe-Al-Cu-FeやCe-Al-Cu-Coの作成も試みる.
|
Causes of Carryover |
業者の割引により,僅かに差額が生じた.次年度に消耗品等に使用する予定である.
|