2020 Fiscal Year Research-status Report
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20K14373
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大熊 信之 京都大学, 基礎物理学研究所, 特定助教 (80869503)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 非エルミート系 / トポロジカル現象 / 電子相関系 / 量子開放系 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は、非エルミート格子ハミルトニアンの複素エネルギースペクトルが境界条件に強く依存する「非エルミート表皮効果」に関する研究を行なっている。申請者はこれまでの研究で、非エルミート表皮効果のトポロジカルな起源を明らかにする事で、「対称性に保護された表皮効果」という新たなクラスの現象を発見した。本年度はその知見を踏まえ、具体的な非エルミート系として電子相関系及び量子開放系を選び、非エルミート表皮効果に起因する特異な輸送現象の理論を構築した。また、これらの研究の過程で得た知見を元に、非エルミート表皮効果の量子異常輸送現象としての解釈を新たに考案した。この新たな解釈により、以前の研究では明らかにすることの出来なかった非エルミート表皮効果のトポロジカルな分類に指針を与える事に成功した。特に、3次元クラスAの表皮効果はRubakov-Callan効果との対応付けが出来る事を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、非エルミート表皮効果のトポロジカルな分類を「非エルミート表皮効果とある種のトポロジカル絶縁体の対応」という解釈を元に行う予定であった。以前の研究では、この対応が成り立つ場合として、「時間反転対称性に守られた表皮効果とDIIIトポロジカル超伝導体」の例を1・2次元の場合に解析した。しかし、同様の対応が全ての対称性クラス・次元において確立される訳ではなく、どのような場合で対応を見出せるかは手探りの状況であった。
一方、本年度行なった研究の副産物として、「表皮効果と量子異常輸送現象の対応」という新たな解釈を得た事により、状況が好転した。この新たな解釈では、場の量子論で知られる「トポロジカル欠陥によるフェルミオン生成現象」と非エルミート・格子系の表皮効果の間に1対1の対応を付けることが出来るため、非エルミート系の複雑な解釈問題をエルミート系の量子異常の文脈で記述することが出来る。 これを従来の解釈と組み合わせる事で、当初よりも効率よくトポロジカルな分類を実行できた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究においては、表皮効果のトポロジカルな分類を完全に確立すると同時に、固体物理系における表皮効果の応用について議論する予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響により、国内外の出張が全て中止になったため。
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Research Products
(4 results)