2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K14373
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大熊 信之 京都大学, 基礎物理学研究所, 特定助教 (80869503)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 非エルミート系 / トポロジカル物性 |
Outline of Annual Research Achievements |
私はこれまでに、非エルミート行列のスペクトル理論をトポロジカル物質科学の観点から調べ、非エルミート現象のトポロジカルな側面を明らかにしてきた。一方、これらの理論は数理的なものにとどまっており、実際の物質科学への応用という観点での課題は多く残っている。本年度は主に非エルミート現象を具体的にボソン系Green関数の系に応用する研究を行った。ボソン系ボゴリューボフ-ドジャン(BdG)方程式は、散逸が存在しない場合においてもそのハミルトニアンのエネルギー固有値問題が非エルミートスペクトル理論で記述できることが知られている。私はBdG方程式に由来する非エルミート性と散逸に由来する非エルミート性が競合する状況を調べるため、南部形式のGreen関数を用いた定式化を行った。この定式化で2つの非エルミート性がある時の粒子正孔対称性の形を明らかにすると共に、非エルミート系特有の境界現象である「非エルミート表皮効果」により引き起こされる全く新しい境界現象を発見した。これらの成果は論文として出版されている。以上の他に、非エルミートトポロジカル現象に関するレビュー論文を執筆し、2023年4月1日に出版された。また、非エルミートトポロジカル現象に関する研究成果が認められ、日本物理学会の若手奨励賞 (領域4)を受賞した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では注目していなかった「2種類の非エルミート性の競合」に着目することで、研究計画の枠を超えて研究を進めることが出来た。具体的な意義としては、これまで研究してきた非エルミート表皮効果という数理現象を、実際の量子系で観測できる可能性を示唆する結果を得た事が重要である。
|
Strategy for Future Research Activity |
ボソン系のグリーン関数に関する性質を非エルミートスペクトル理論の観点から調べる。また、グリーン関数に特別な形を要請する場合、それがどういった物理系で実現できるか?という点も重要である。この目的のためには、グリーン関数の自己エネルギーを具体的な模型から導出する必要がある。これまで培ってきた非エルミート系に関する直観と物理的考察から模型を設定し、実際に所望の自己エネルギーを得る事が今後の研究の最大の目標である。
|
Causes of Carryover |
コロナ禍のため、期間内の出張を全面的に自粛し、特に海外への渡航に予算を用いなかった事が原因である。来年度には高性能の計算機の購入などを予定している。
|
Research Products
(5 results)