2020 Fiscal Year Research-status Report
構造体の連続変形による空間局在状態のトポロジカル生成
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20K14374
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中田 陽介 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (50745205)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | トポロジー / 局在 / フォトニック結晶 / サウレスポンプ |
Outline of Annual Research Achievements |
結晶中の欠陥周辺には欠陥モードと呼ばれる局在状態が現れることがよく知られている。こうした欠陥モードは90年近くに渡って精力的に研究されているにも関わらず,その物理的起源はこれまで明快に説明されてこなかった。我々はこれまでに1次元系に対して構造の連続変形に基づき、欠陥モードのトポロジカルな起源を解明してきた。本研究では上記の研究をさらに発展させ2次元以上の系に対して欠陥モードのトポロジカルな起源を調べることを目的としている。初年度は2次元フォトニック結晶の連続変形について考察した。その結果、結晶の角に欠陥を導入するような操作でコーナー状態の連続生成が可能であることを示した。さらに、こうしたコーナー状態生成において椅子取りゲームがその生成原理を与えることも明らかにできた。次に、ひねり操作に対応する連続変形について考察した。その結果として、1次元系では起こりえない新たな局在モード生成メカニズムを見い出した。現在、得られた結果の物理的解釈を進めている状況である。上記の結果を実験的にも検証するために、マイクロストリップ線路の設計も進め、マイクロ波領域での実験検証の準備を行っている。加えて、動的変形を相転移材料で実現するために必要な予備的実験も行なった。以上のような研究が進むことによって、波がなぜ局在化するのか?という問題に対する新たな知見が得られると考えられる。また、そうした局在化現象を用いて、光と物質の相互作用を増強したり、欠陥導波路を生成したりすることができるようになる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1) 2次元フォトニック結晶に対して2次元系特有の連続変形を考え、局在状態がどのように生成されるかについて調べた。 1-1) まず、コーナーに欠陥を導入するような操作を考え、コーナーに局在状態を生成できることをシミュレーションによって示した。さらにこうしたコーナー状態生成が椅子取りゲームによって説明されることを明かにした。この結果は対称性保護によらないコーナー状態生成の方法を与えている。 1-2) 次に2次元フォトニック結晶をひねるような操作に対して欠陥モードがどのように現れるかについて調べた。その結果、1次元的なトポロジカル数は0になるにも関わらず、欠陥モード生成ができる例を構築できた。こうした欠陥モード生成は1次元系では本質的に起こらないものである。現在、そのメカニズムについて考察を進めている。 1-3) 上記のようなコーナーモード生成を実験的に実現可能な系について検討した。2次元マイクロストリップ線路に対してシミュレーションを行ない局在状態生成に必要なバンドギャップ形成を設計できた。今後、こうした具体的な系を用いて研究を進めていく予定である。 2) 構造体の連続変形の方法として二酸化バナジウムの相転移が使える可能性について検討した。ここではサファイア中の導波路モードに対して動的変形を起こせる可能性について検討した。具体的には、常温接合した多層のサファイア基板を準備し、その複合基板上に二酸化バナジウムが成長可能であることを確認した。この結果はトポロジカル変形を実現するのみならず、他の動的デバイスにも応用可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究結果として1次元結晶では見られない局在現象が見い出された。この現象に対してどういった理論的説明が可能かについて詳しく検討する。特にどういったトポロジカル数がこうした現象に寄与しているのか、という点と、人工次元拡張における対称性に着目し研究を進める予定である。さらに、実験的にもマイクロストリップ線路を使ったシステムを実装し、実際の系で局在の連続生成が可能であるかを検証する。以上のように理論・実験の双方から2次元系の局在モード形成について明らかにした後、さらに次元を上げ、3次元系特有の現象についての研究も進める。
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Causes of Carryover |
初年度にマイクロ波基板を発注し実験を行なう予定であったが、理論的検討を行ったところ当初予測していなかった興味深い現象を発見し、そちらの検討を進めている。その現象の検証を次年度に行う予定である。
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