2021 Fiscal Year Research-status Report
構造体の連続変形による空間局在状態のトポロジカル生成
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20K14374
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中田 陽介 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (50745205)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | トポロジー / 局在 / フォトニック結晶 / サウレスポンプ / マイクロストリップ線路 |
Outline of Annual Research Achievements |
結晶の欠陥部分に局在状態が形成されることはよく知られている。近年こうした局在化現象にトポロジカルな意味付けが与えられてきている。例えば、1次元系においては欠陥導入を並進操作と関連付けることにより欠陥状態のトポロジカルな形成機構が明らかにされている。一方、2次元以上の高次元空間では1次元系と質的に異なる現象が生じる可能性がある。本研究ではこうした高次元空間におけるトポロジカルポンプの機構をメタマテリアルを対象に解明することを目的としている。2次元以上の系での局在化現象の本質が明らかにできれば、その知見を活用し量子トランスデューサの効率向上や、局在モードを用いたセンシング技術への展開可能性が開ける。
本年度は2次元トポロジカルポンプのマイクロ波領域における実験検証を行なった。少しづつ構造を変形した2次元マイクロストリップ線路を複数作製するとともに、その表面における電場分布を測定する測定系を構築した。これらを用いて2次元トポロジカル局在状態の生成を検証した。その結果、2次元的な局在状態であるコーナー状態と思われる分布の観測に成功した。一方、現時点の実験データはトポロジカルな起源を直接示す段階には至っていない。次年度以降、測定系を改善するとともに構造形状を工夫する。それによって実験で直接的に高次元局在状態のトポロジカルな起源を明示できるようにする。さらに複数のトポロジカルポンプのスキームを試し、局在モード生成の階層性を明らかにしたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1) 局在モードポンピングを実現するための回路基板を設計した。実験で局在状態を励起するには外部から信号を加える必要がある。こうした実際上の配置も考慮に入れ、詳細なシミュレーションを行なった。この結果、実際的なセットアップでも局在状態ポンピングが可能であることが明らかになった。得られた成果は日本物理学会2021年秋季大会において発表された。 2) コーナ状態ポンピングに関して実験的検証を開始した。コーナー状態がポンピングされるようにパラメータを少しづつ変化させた基板を複数枚作製した。実際の基板ではバルクモードを減衰させるため抵抗を導入する工夫を行なった。さらに作製した基板に対してエンドランチコネクタを固定し外部励振を可能とした。 3) マイクロ波領域で2次元的な場の分布を観測するための系を構築した。外部コネクタからマイクロ波信号を印加した状態で近接場アンテナを用いて回路表面がスキャンされる。これにより電場の振幅・位相の2次元分布を直接得ることができる。 4) 2で準備した基板を3で構築した系を用いて評価した。この結果、コーナー状態と思われる場の分布を得ることに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度、コーナー状態と思われる電場分布の実験的観測に成功した。一方、得られたコーナー状態がトポロジカルな起源を持っていることをまだ直接的に示せてはいない。このため測定系をさらに改善するとともに、はっきりと局在状態が現れるような構造形状を模索する。これにより最終的にトポロジカルポンプを確証できる実験データの取得を目指す。得られた結果を用いて他のトポロジカル材料とのアナロジーや系の対称性との関連を考察する。また、現象の背後に存在するトポロジカル数や局在化現象が発生する要因も明らかにしたい。コーナー状態のトポロジカルポンピング実証後は、初年度に見いだした特殊なポンピングスキームについて実験検証を進める。
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Causes of Carryover |
初年度に予想外の現象が発見され、その解明に時間を割いたため全体計画が遅れている。このため補助事業期間延長を行なっている。
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