2020 Fiscal Year Research-status Report
First principles investigation on optical-control of electronic structure
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20K14382
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
佐藤 駿丞 筑波大学, 計算科学研究センター, 助教 (90855462)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 超高速現象 / アト秒物理 / 非線形光学 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、高強度な光によって駆動される物質中の電子ダイナミクスを微視的な理論計算により解析することで、光によって電子構造を制御し物性を改変することを目指して研究を進めている。当該年度では、光による電子構造制御の限界を調べるため、高強度な光によって駆動された量子系が散逸のある環境の下でどのようなダイナミクスを示すかを調べた。その結果、光によって駆動された量子ダイナミクスのコヒーレンスが環境効果によって消失し、光ドレスト状態の形成が妨げられることが明らかとなった。また、高強度な光を用いることで環境効果より光駆動効果が優勢となることで、光ドレスト状態の形成が回復することを明らかにした。また、実験グループとの共同研究において、環境による散逸効果が光ドレスト状態の形成に与える影響について実験と理論の面から詳細に解析した。
さらに、当該年度は、高強度超短パルス光が固体アルミニウム、および単層MoSe2膜に引き起こす超高速な高額応答の変化を第一原理計算により解析した。その結果、金属アルミニウムにおいては、光励起による電子占有数分布の変化により、広範なエネルギー領域において物質の光吸収が増大することが明らかとなった。また、単層MoSe2薄膜においては、光が誘起する電子の空間的な局在化現象により、物質の光学的性質がフェムト秒の時間スケールで超高速に変化することを明らかにした。
このような成果は、光によって物質の性質を超高速に制御するための技術の基盤となるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第一原理計算と簡単化された模型による計算を組み合わせることで、光による電子状態制御の適用限界を明らかにしつつ、現実の物質における光誘起超高速現象の微視的起源を明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、第一原理計算、及び単純化された模型を用いた計算により、高強度な光が物質中に誘起する電子のダイナミクスを解析することで、光によって電子構造、及び電子物性を制御・改変する方法を明らかにしていく。また、実験グループと協力することで、より現実的な系での電子構造の制御の実現に向けて、既存の実験の解析、及び新たな実験の提案、光による電子構造制御の原理実証を行っていく。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの流行により、物品の調達が計画通り遂行できなかったため、次年度使用額が生じた。生じた次年度使用額により、計画していた物品の調達を行う。
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