2020 Fiscal Year Research-status Report
高感度光電流コヒーレント分光法の開発と半導体ナノ粒子の非線形電流制御
Project/Area Number |
20K14385
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田原 弘量 京都大学, 化学研究所, 助教 (20765276)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 光物性 / エキシトン / ナノ粒子 / 量子ドット / 光電流 / 光電変換 / コヒーレント制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
半導体ナノ粒子は太陽電池や発光ダイオードなどの光電デバイスへの応用が期待されている材料であり、基礎的な物性挙動の理解が望まれている。本研究では、半導体ナノ粒子のエキシトン複合体と光電流生成過程の解明を目的として、高感度の光電流コヒーレント分光法を開発する。電子状態の量子コヒーレンスを計測することで、電子状態変化にともなう電流生成メカニズムの解明を目指す。本年は、光電流検出に向けたナノ粒子薄膜試料の作製と光電流分光法の開発を行った。化学合成されたナノ粒子の表面はリガンドで覆われているため、そのままナノ粒子どうしを近接させてもキャリアの伝導性は生じない。そこで、光電流検出を行うためにナノ粒子表面のリガンド処理を行い、ナノ粒子内に生成した光キャリアを光電流として外部に取り出すことができるナノ粒子薄膜を作製した。次に、電子系のコヒーレント信号を光電流で検出するために、位相ロックパルスと光電流検出法を組み合わせた分光システムを開発した。この手法は、2本の励起パルスの相対位相を高精度にロックしながらスキャンすることでコヒーレントな信号を計測する方法である。ナノ粒子薄膜試料を用いることで、光電場の振動に追従する光電流応答を検出することに成功した。さらに、ペロブスカイトナノ粒子ではエキシトン複合体の生成過程について、過渡吸収分光および過渡光電流検出に成功した。これらの結果は、ナノ粒子内における光キャリアの生成・緩和過程および光電流生成メカニズムの解明につながる成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度に計画していた光電流計測に向けたナノ粒子薄膜の作製およびコヒーレント信号の光電流検出に成功し、次年度に計画しているマルチエキシトンの光電流計測に向けた指針を得ることができた。以上の進捗状況により、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究で計測に成功した光電流コヒーレント信号には、ナノ粒子薄膜特有の物性挙動が含まれることが分かってきた。次年度には、励起強度に対する量子コヒーレンスの信号強度の相関を明らかにすることで、マルチエキシトンに起因した光電流の発生メカニズムについて研究を進める。さらに、過渡光電流計測に関する実験を進め、エキシトン複合体と高速光電流発生メカニズムの関係を明らかにする。
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Research Products
(5 results)