2020 Fiscal Year Research-status Report
Study on recurrent fluorescence via single ro-vibronic state
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20K14386
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
飯田 進平 東京都立大学, 理学研究科, 助教 (20806963)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 遅延電子脱離 / 輻射冷却 / 原子分子 / イオン蓄積リング / レーザー分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では等核2原子分子であるSi2-の遅延電子脱離過程の観測と遅延電子脱離過程から存在が予測されるポアンカレけい光(内部転換・逆内部転換に伴う遅延けい光過程)の放出機構の解明に向けて、まずは遅延電子脱離過程を解明を試みた。 東京都立大学にある静電型イオン蓄積リング(TMU E-ring)とレーザー分光技術を組み合わせて、Si2-とSi2-と非常によく似た電子構造をもつC2-で以下の実験を行い成果を得た。 Si2-では、静電型イオン蓄積リングにより直接電子脱離と遅延電子脱離を明確に分離することで直接電子脱離に埋もれた10μsオーダーの遅延電子脱離を観測した。さらに、レーザー分光技術による振動・回転励起スペクトルの測定から、この遅延電子脱離過程は光吸収後に電子基底状態X2Σg+(v=3)->電子励起状態B2Σu+(v=8)の束縛状態を経由して、振動自動電子脱離により中性化していることが明らかとなった。また、Si2-と似た電子構造をもつC2-において、Si2-と同様の測定を行ったが10μsオーダーの遅延電子脱離過程を観測できなかった。 一般的な等核2原子分子では、双極子禁制のため振動脱励起が起きず振動緩和しないが、C2-とSi2-には電子基底状態XのΔv=1程度上に電子励起状態Aが存在しており、X⇔Aの電子脱励起による振動緩和が起こる。この振動緩和は理論と実験で異なる結果が報告されていたが、本研究で振動回転励起スペクトルを用いて、それぞれの振動準位の寿命を正確に評価し、理論が正しいことを証明した。 これらの成果は別々に国際雑誌The Journal of Physical Chemistry lettersから出版された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究におけるSi2-のポアンカレけい光の放出機構の解明を実現するために、ポアンカレけい光の存在が推測される遅延電子脱離過程の詳細を知ることができた点、および、等核2原子分子において、Si2-やC2-でのみ観測される特殊な振動緩和の寿命を評価することができた点は大きな進展である。ポアンカレけい光の放出機構の解明に向けて、計画はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究から得られた実験結果を元に、最も効率よくポアンカレけい光が起こると予測される振動・回転準位を選択し、Si2-のポアンカレけい光を観測することを目指す。
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