2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K14393
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Research Institution | National Institute of Information and Communications Technology |
Principal Investigator |
逵本 吉朗 国立研究開発法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所量子ICT先端開発センター, 研究員 (80807470)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 量子光学 / 量子情報処理 / 単一光子 / 量子通信 / パラメトリック下方変換 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、励起レーザの繰り返し周波数と自発的パラメトリック下方変換(SPDC)で生成された光子の識別不可能性の関係を明らかにし、GHzオーダの繰り返し周波数で独立に発生させた光子対間の高明瞭度な二光子干渉を観測することを目標に研究を行っている。 本年度は、励起レーザの繰り返し周波数が識別不可能性に及ぼす影響を数値シミュレーションで予想することに成功し、実際にGHzオーダの繰り返し周波数で高明瞭度な二光子干渉の観測実験に成功した。まず、識別不可能性を評価するために光子対の二光子波動関数に励起光の繰り返し周波数をパラーメータとして組み込んだモデルを構築し、数値シミュレーションで解析した。その結果、当初の予想通り励起光の高繰り返し化にともなって二光子波動関数は疎なコム構造となり、識別不可能性が劣化することを確認した。さらに、こうして生じた各コムの太さは、光子検出器の時間分解能の逆数で決まることを確認した。つまり、光子検出器のジッタ―が励起光の繰り返し周波数(コムの間隔)の逆数よりも十分小さければ、二光子波動関数は連続スペクトルと見なすことができ識別不可能な光子対を生成することができる。数値シミュレーションにより、現在の光子検出器(ジッタ―:150ps)を用いても、繰り返し周波数3 GHz程度ならば、高明瞭度な二光子干渉が観測できるという予想を得た。続いて、実際に繰り返し周波数3.2 GHzの励起レーザを立ち上げ、光子対を独立に二対生成して、それらの間の二光子干渉の実験を行った。その結果、明瞭度0.88±0.3を得た。この値はこれまで報告されてきたパルス励起のSPDCによる二光子干渉の明瞭度と遜色なく、繰り返し周波数については世界記録を更新した。また、得られた明瞭度はシミュレーション結果の0.93と近い値となっていることも確認した。これらの結果については、現在論文を執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画通り、自発的パラメトリック下方変換で生成された光子対の識別不可能性を励起レーザの繰り返し周波数などの実験パラメータから定量的に推定する理論モデルを構築し、実際に3.2 GHzの繰り返し周波数で独立に発生させた光子対間の高明瞭度な二光子干渉を観測することに成功した。これらにより、本研究の中間目標を達成したため、当初の計画通り順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度内に、本研究の中間目標(GHzオーダ―の励起光を用いて、古典限界を超える二光子量子干渉を観測する)までを達成したので、最終目標(さらに高速な光子対生成と二光子干渉の観測)の達成へ向けて研究を進める。現在、励起レーザを生成するためのシード光として狭線幅のcwレーザを用いているが、これを線幅可変の光源に置き換えることにより、光子対の可干渉性を維持したままさらなる高速化を目指す。
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Causes of Carryover |
物品費については納期の大幅な遅れがあり、次年度に調達することにしたため次年度使用額が生じた。旅費については、学会のオンライン化により、次年度使用額が生じた。これについては、論文の投稿料等に充てる予定である。
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Research Products
(4 results)