2020 Fiscal Year Research-status Report
Spatio-temporal hierarchy in light-irradiated open many-body systems
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20K14394
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小野 淳 東北大学, 理学研究科, 助教 (40845848)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 遍歴磁性体 / スピントロニクス / 光誘起相転移 / スピンカイラリティ / 磁気スキルミオン / ディラック半金属 / スピン軌道トルク / 磁気光学効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
強相関多体系,特に磁性体に高強度の直流電場やテラヘルツパルス電場を印加した際の時空間ダイナミクスについて数値的解析を行い,主に以下の成果を得た。 (1)近年,磁気スキルミオンに代表される空間的に変調した様々な磁気構造(スピンテクスチャ)が関心を集めている。これらの多くでは磁性体の空間反転対称性の破れが本質的な役割を果たしている。本研究では,三角格子上の近藤格子模型における光誘起実時間ダイナミクスの解析を行い,空間反転対称性が保たれているにもかかわらず,スピンスカラーカイラル構造や120度構造,ならびに磁気スキルミオン構造が光照射によって生じることを見出した。これらの非平衡状態におけるスピン構造は,従来のレーザー加熱効果等とは異なり,光照射により誘起される特異な電子状態分布によって安定化していると考えられる。 (2)反強磁性体は,その擾乱に対する頑健性やダイナミクスの高速性などの特徴から,スピントロニクス分野においても盛んに研究されている。反強磁性ディラック半金属に着目し,直流電場ならびにテラヘルツパルス電場によって誘起される磁気構造および電子構造の実時間ダイナミクスの解析を行った。比較的弱いパルス強度であっても,ピコ秒程度の時間スケールで交替磁化(ネールベクトル)の方向が変化すること,ならびにこれに伴ってディラック点におけるバンドギャップが変調することが見出された。このネールベクトルの再配向の過程においては,従来から知られていた交替的なスピン軌道トルクのみならず,磁気異方性も重要な役割を果たすことが示された。また,反強磁性秩序は正味の磁化を持たないためにその検出が強磁性秩序等に比して困難であるが,本理論模型では磁気光学効果が現れることが示され,これにより高速時間分解測定が可能であることも明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記成果は日本物理学会等で発表しており,現在論文を投稿中・投稿準備中である。遍歴磁性体において光により誘起される時空間ダイナミクスについてそれぞれ異なる方向性で新たな成果が得られており,今後さらなる研究の進展が見込まれる。全体の計画に照らして,おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本質的に重要と考えられる要素を取り入れたこれまでの模型の解析に加え,必要に応じて第一原理計算も援用することでより実際の物質に近い状況での計算を行い,実験検証に向けた具体的・定量的な予言を試みる。また,磁性体における磁気分極の良い対応物として誘電体における電気分極が挙げられるが,その高速光制御という観点からの理論研究は発展の余地があり,今後検討を進める。
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Causes of Carryover |
COVID-19感染拡大を受けて多くの国内・国際会議がオンラインでの開催となったため,当初計画よりも旅費が大きく減少した。これは次年度以降の旅費として使用する。また,当初購入を予定していたワークステーションに関しては,諸性能や納品時期を勘案した結果,次年度以降に見送るものとした。
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Research Products
(8 results)