2021 Fiscal Year Research-status Report
Spatio-temporal hierarchy in light-irradiated open many-body systems
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20K14394
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小野 淳 東北大学, 理学研究科, 助教 (40845848)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 光物性 / 超高速現象 / 強相関電子系 / 第二高調波発生 / 強誘電体 / 光駆動 |
Outline of Annual Research Achievements |
いくつかの典型的な電荷・スピン結合系や強相関電子系における光誘起現象を解析し,主に以下の成果が得られた。 (1)高強度のテラヘルツパルスを用いた電気分極の高速制御がこれまで盛んに研究されている。電気分極等による空間反転対称性の破れに対しては,光第二高調波発生(SHG)が優れた時間空間分解能を持つプローブとして利用されてきた。強誘電体におけるごく最近の実験を受けて,テラヘルツパルスによって変調される電気分極とSHG強度との関係を詳しく調べた。時間依存摂動論と数値計算に基づく解析の結果,量子ゆらぎが増大する限定的なパラメータ領域において,SHG強度変化量とテラヘルツパルス電場の位相は一致せず,パルスの時間微分波形等に依存する寄与が現れることが明らかになった。 (2)外場を制御することによって量子系の時間発展を反転させる現象がこれまでいくつか知られており,その代表例として核スピン等の少数準位系におけるスピンエコーが挙げられる。本研究ではバンド絶縁体やモット絶縁体等の理論模型について解析を行い,多体系の連続準位,すなわちエネルギーバンド構造を反映した新たなエコー現象を見出した。そこでは光キャリアを励起するパルス波形が物質の量子状態に転写され,別のパルスによって光キャリアを駆動することで,キャリア再結合に伴いパルス波形を時間反転したエコー光パルスが発生する。エコー光パルスの周波数は光キャリアのエネルギーを反映しており,駆動パルス強度を変化させることで光キャリアの分散関係が得られる。特に,一電子励起スペクトルがブロードになる強相関系においても明瞭な分散関係が再構築されることが示され,新たな運動量分解分光法の基礎原理になることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の成果は日本物理学会や国際会議等で発表を行っており,現在は論文を投稿中・投稿準備中である。前年度までの遍歴磁性体における光誘起ダイナミクスに加え,強誘電体における非線形応答や強相関絶縁体における高速現象についても当初予期していなかった新たな知見が得られており,今後の進展が見込まれる。全体の計画に照らして,おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
遍歴磁性体や強誘電体に関するこれまでの研究をさらに進展させ,円偏光照射の場合や電子系に散逸を取り入れた場合の解析を中心に行う。また,新たに見出されたエコー現象については,散逸の効果を取り入れることで従来のスピンエコー等との関連を詳しく明らかにするとともに,エネルギーバンドの幾何学的構造がどのようにエコーに反映されるかについて解析を進める。
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Causes of Carryover |
COVID-19の感染拡大を受けて多くの国内・国際会議がオンラインでの開催となったため,当初計画よりも旅費が大きく減少した。これは次年度の旅費・物品費等に充てる。
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Research Products
(9 results)