2020 Fiscal Year Research-status Report
Topological magnon bands in kagome antiferromagnets
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20K14395
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
那波 和宏 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (10723215)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | マグノン / 反強磁性体 / 中性子散乱 |
Outline of Annual Research Achievements |
電子系において議論されているトポロジーの概念は電子系のみならずマグノン等のボソン系にも拡張できることが明らかにされつつある。本研究ではマグノンのバンドトポロジーに関する知見を得るため、電子系におけるスピン-運動量ロッキングの磁性体版に対応する擬スピン-運動量ロッキングをカゴメ格子反強磁性体を舞台に検証する。研究初年度はその最有力候補物質であるジャロサイト単結晶試料を水熱合成法により作製した。本単結晶試料の育成においては、界面での酸化還元反応をいかに制御するかが重要である。液体-気体界面の面積を変えるための内蓋の大きさ、反応温度、溶媒の濃度等を制御し、再現性にまだ課題はあるものの数十mg程度の単結晶試料の合成が可能となった。この試料サイズは過去に行われた中性子非弾性散乱実験に用いられた試料サイズと同程度の水準である。
平行してカゴメ格子反強磁性体の物質開発も行い、擬スピン1/2間にIsing型の相互作用が働くブリージングカゴメ格子反強磁性体Yb3Ni11Ge4の物性を報告した。本物質の極低温の中性子回折実験では0.8Kから短距離秩序が発達するものの、0.05Kでも磁気秩序の兆候を示さない。したがってマグノンの観測は期待できないが、どのような磁気準粒子が低温で発達しているのかというフラストレート磁性体としての興味は持たれる。こちらの物質についても中性子非弾性散乱実験を行うべくブリッジマン法による単結晶試料の育成を進め、少なくとも数mm角程度の大きさのものが確実に得られる状況となっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題の成否は十分な大きさの単結晶試料が得られるかどうかにかかっている。試料サイズは既に中性子非弾性散乱実験が行える水準には達しているため、研究初年度としては概ね順調と判断する。並行して進めているカゴメ格子反強磁性体の物質開発も順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
重水素化した単結晶試料の育成を試み中性子非弾性散乱実験を行う。チョッパー分光器等を利用して広い逆格子空間においてマグノンの分散を精密に測定し、相互作用パラメータを決定する。その結果、マグノンの織りなすバンドのトポロジーを推定することができると期待される。平行してさらなる単結晶試料の大型化を試み、最終年度に予定している偏極中性子非弾性散乱実験の実施に向けての準備を進める。
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Causes of Carryover |
試料原料の入手にやや時間を要したため。既に購入済みである。
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Research Products
(9 results)