2022 Fiscal Year Annual Research Report
マヨラナ粒子を利用した、長いコヒーレンス時間を持つ量子ビットの開発
Project/Area Number |
20K14398
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
井上 悠 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 研究員 (90843342)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ジョセフソン接合 / トポロジカル絶縁体 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、トポロジカルジョセフソン接合の、ジョセフソン効果による非散逸伝導を観測するために、2021年度に続き、2つの超伝導電極間距離(L)の異なる接合を系統的に測定した。その結果以下を観測した。 ・電極間に生じる抵抗(R)の温度依存性を測定したところ、L = 200 nm以下の試料で、温度減少に伴い次第に電気抵抗が減少していく振る舞いが観測され、L = 150 nmの試料で温度2 KにおいてR ~ 0を観測した。 ・温度1.8 KにおけるRのL依存性から、電極間距離に応じて残量抵抗値が系統的に増加していく振る舞いが見られた。 ・上記現象がジョセフソン効果によるものであるかを検証するため、I-V測定、磁場印可測定を行ったところ、トポロジカル絶縁体に注入された超伝導秩序によるジョセフソン効果と矛盾しないことが確かめられた。 上記は、トポロジカル絶縁体上に作製したジョセフソン接合の、ジョセフソン効果による非散逸伝導の観測に成功した結果である。トポロジカル絶縁体側に注入された超伝導秩序の超伝導ギャップの大きさは、上記測定から、およそ118 μeVと求められる。これは、温度1.37 Kに相当する。したがって、ジョセフソン効果に起因する様々な現象を観測しようと考えるならば、温度1.37 K以下に試料を冷却する必要がある。当初、国外の研究機関で試料を温度1 K以下まで冷却して、ジョセフソン効果の精密測定を実施する予定だったが、新型コロナウイルス蔓延による渡航制限により、本課題実施期間中では実現がかなわなかった。一方で、本研究課題の実施により、ジョセフソン接合作製のための技術基盤の確立ができた。このことは、マヨラナ粒子を利用した、長いコヒーレンス時間を持つ量子ビットの実現に向けた今後の研究のベースになると考える。
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