2021 Fiscal Year Annual Research Report
有機超伝導体における熱輸送測定を用いたFFLO秩序変数の空間変調ベクトル観測
Project/Area Number |
20K14400
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
杉浦 栞理 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (20869052)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 超伝導 / 有機伝導体 / FFLO / 低温物性 / 強磁場 / 輸送測定 |
Outline of Annual Research Achievements |
超伝導電子対(クーパー対)がゼロではない有限な重心運動量qを持つFulde-Ferrell-Larkin-Ovchinnikov(FFLO)超伝導は、基礎理論であるBCS理論(q = 0)の枠組みでは説明できない超伝導秩序変数Δ(r)が空間変調を示し、「エキゾチック超伝導」という新たな枠組みの超伝導のひとつとして磁場中相転移やΔ(r)の観測に興味が持たれている。近年、特に有機超伝導体を中心とした層状超伝導体において研究が進んでいるが、FFLO研究における最重要課題であるqベクトルの観測は未だ達成されていない。そこで本研究では、熱・電気輸送特性の詳細な異方性測定からqベクトルの情報を得ることを目的とした。 本研究では研究目的の達成に向け、強磁場中において二軸回転機構によって精密に磁場方位を制御した電気抵抗測定、およびネルンスト測定環境を構築した。電気抵抗測定では、FFLO転移における抵抗異常とFFLO相内における秩序変数振動と渦糸状態とが協奏した渦糸ダイナミクスに起因する抵抗振動(整合効果)を明確に観測した。詳細な面内磁場方位異方性測定からは、いくつかの有機FFLO超伝導体において整合効果の異方性が小さいことが明らかになった。これは整合効果の発現に重要なノーダルラインの構造に異方性が小さいことを示している結果と考えられる。これらの結果から、FFLO超伝導相内において複数のqベクトルが存在する可能性(マルチqベクトル状態)を実験から示唆した。このような有機超伝導体におけるFFLO状態でのqベクトルの面内異方性に関する実験的なアプローチは本研究が初めてであり、本研究で得られた結果はFFLO超伝導における今後の理論的・実験的研究に対して重要な知見を与える事ができた。
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Research Products
(3 results)