2020 Fiscal Year Research-status Report
Microscopic theory for topologically ordered phases in interacting many-body quantum systems
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20K14402
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤 陽平 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (50802732)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | トポロジカル相 / 量子スピン液体 / 量子ホール効果 / エンタングルメント |
Outline of Annual Research Achievements |
強く相互作用する電子系やボゾン系において発現するトポロジカル相では、低エネルギーでの素励起が元の電子やボゾンと異なる統計性を持つことがある。これらのトポロジカル相には、分数励起が空間全体を自由に動くトポロジカル秩序相と、分数励起がより制限された低次元の部分空間のみを動くfracton相がある。 本年度は、申請者らがこれまでに行ってきたトポロジカル秩序相に対する量子細線を用いた微視的な模型の構成法を発展させ、いくつかの基本的なfracton相の模型の量子細線による構成を行った。特に近年提唱された、セル分割された空間にトポロジカル秩序相とその非自明な界面状態を配置してfracton相を構成する方法との関連性に着目し、厳密に解ける格子模型が存在しないような新たなタイプのfracton相の模型を構成した。そのような模型では、分数量子Hall状態に見られるような分数励起が2次元の部分空間に現れると同時に、非自明なギャップレス表面状態が現れると期待される。これらの結果の一部は、2021年2月に行われた研究会オンラインCRESTチュートリアル・ワークショップ「物質のトポロジカル相の理論的探究」におけるチュートリアル講演で発表した。また、関連する論文を現在執筆中である。 並行して、1次元量子多体系の非平衡ダイナミクスに関連して、量子測定が引き起こす定常状態のエンタングルメント相転移についても研究を進めている。特に、非自明なトポロジカル相を持つ系において連続測定が引き起こすエンタングルメント相転移について、その臨界的性質を数値的に調べ、いくつかの予備的な結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画にあるように、セル分割された空間におけるfracton相の構成法と量子細線による微視的模型の構成法とに関連を見出し、いくつかの新たなfracton模型の構成を行った。また、当初の研究計画にはないトポロジカル相に関連したエンタングルメント相転移についても、予備的な結果を得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在の研究を進展させ、量子細線を用いたfracton相の微視的模型の構成を、より一般的なfracton相あるいはトポロジカル秩序相へと適用することを目指す。そのために、セル分割された空間におけるfracton相の構成に現れる励起ギャップあるの非自明な界面状態の分類と、その量子細線による構成、対応する準粒子励起の空間的な可動性について一般的に考察したい。並行して、非平衡量子系におけるエンタングルメント相転移についても、トポロジカル相と臨界性との関連を調べていく。
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Causes of Carryover |
本年度は、新型コロナウイルスの流行のため、国内外の研究会が中止あるいはオンライン開催となったため、旅費として使用する予定であった助成金が余った。これらは翌年度の助成金と合わせて、PCや書籍の購入や、現地開催となった研究会参加のための旅費に充てる予定である。
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