2021 Fiscal Year Annual Research Report
強磁場下超音波計測を用いたp-f混成による電子ネマティック相と四極子秩序の研究
Project/Area Number |
20K14404
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
栗原 綾佑 東京大学, 物性研究所, 特任研究員 (00795114)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 電気多極子秩序 / 電子ネマティック相 / 結晶対称性の破れ / 超音波計測 / 非破壊パルス強磁場 / 4f電子 / 強相関電子系 |
Outline of Annual Research Achievements |
CeRhIn_5はゼロ磁場中で4f電子が局在し反強磁性秩序を示すが,CeIrIn_5はゼロ磁場中で4f電子が遍歴的な挙動を示す.また,CeRhIn_5の4f波動関数は面内に広がった形を持つ一方で,CeIrIn_5の4f波動関数は3次元的な形をもつ.それゆえ,両者の比較から磁場誘起電子ネマティック秩序発現に寄与する量子状態の知見獲得が期待できる. 本研究では,強磁場下超音波計測を遂行することでCeRhIn_5, CeIrIn_5およびLaRhIn_5の弾性定数の磁場依存性を網羅的に測定した.その結果,CeRhIn_5においては,D_{4h}の既約表現B_{1g}に属する弾性定数(C_{11}-C_{12})/2が磁場誘起電子ネマティック相で顕著な異常を示した.この結果は,B_{1g}で記述される結晶対称性の破れと,それに伴う電気四極子O_{x^2-y^2}を秩序変数とする電子系の対称性の破れが生じていることを示す結果である.その一方で,4f電子を含まないLaRhIn_5においては,すべての弾性定数で異常は現れなかった.以上から,CeRhIn_5における電子ネマティック秩序は,4f電子の寄与が必要であることを実験的に示した. また,CeIrIn_5における弾性定数の磁場依存性を網羅的に測定した結果,すべての弾性定数でメタ磁性やLifshitz転移に由来する弾性異常を観測した.この結果から,CeIrIn_5における磁場誘起相転移では,Ceイオンの価数揺らぎや転移といった,等方的な電子系の自由度が重要であることを見出した.この結果から,3次元的に広がった4f電子の波動関数と周囲のIn-5p電子との混成が重要であることが示唆される. 以上の結果から,電子ネマティック秩序実現に関して,面内p-f混成効果が重要であると結論付けた.
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Research Products
(3 results)