2021 Fiscal Year Annual Research Report
Interplay between topology and thermal fluctuation in skyrmion-hosting materials
Project/Area Number |
20K14410
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大池 広志 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (70725283)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | トポロジー / 非平衡 / 磁性 / 準安定 / 熱ゆらぎ / スキルミオン / ゲージ場 / ベリー位相 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は、磁気スキルミオン物質の有限温度での性質に着目して、トポロジーと熱ゆらぎの協奏によって生まれる現象を探索することである。磁気スキルミオン物質中の伝導電子は、磁気構造を形成するスピンと平行な多数派スピンの電子と、反平行な少数派スピンの電子に分類できる。多数派スピンと少数派スピンは、異なるトポロジーの空間を伝導することに由来して、あたかも逆符号の磁場を感じているかのように振る舞うことが知られている。初年度の研究では、この仮想的な磁場(創発磁場)の強度が温度に依存しており、ホール効果(電流に対する応答)とネルンスト効果(熱流に対する応答)ではその温度依存性が異なっていることを示唆する結果が得られていた。 最終年度は、創発磁場の温度依存性の原因を追究するために、第一原理計算に基づいた解析を行った。これにより、電流下と熱流下では流れを担う電子のエネルギー・運動量・スピンが異なるために、創発磁場が共通であってもホール効果とネルンスト効果の温度依存性が異なって見えることが明らかになった。創発磁場の描像は断熱近似を前提としているが、熱ゆらぎによって非断熱過程が摂動的に誘起されるとトポロジーの定義が不明瞭になり、言わば「トポロジーゆらぎ」によって創発磁場が弱められると理解することができる。このように、創発磁場の温度依存性がトポロジカルな物性への熱ゆらぎの効果と結び付けられることを示し、本研究課題の目的を達成した。 また、研究計画には含まれていなかったが、電流や熱流を大きくすると磁気スキルミオンの崩壊現象が観測され、その条件は試料形状に依存することが分かった。このような流れが誘起する非摂動的な現象や試料形状のような境界条件への鋭敏さは、磁気スキルミオン物質以外でも観測されており、特にトポロジーと結びつけてどのように理解されるかは今後の研究の方向性として重要であると考えている。
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