2020 Fiscal Year Research-status Report
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20K14414
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
広瀬 雄介 新潟大学, 自然科学系, 助教 (00647125)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 励起子絶縁体 / 不純物効果 / 元素置換 / 新物質探索 |
Outline of Annual Research Achievements |
励起子絶縁体候補物質であるTa2NiSe5のTaおよびNiサイトの元素置換を試みた。EPMAによる組成分析と単結晶構造解析によって、元の構造を保ったままいくつかの元素で置換した単結晶の育成に成功した。それぞれの元素によってTa2NiSe5の励起子絶縁体転移と関連している構造相転移温度がどのように変化するかを電気抵抗測定によって決定した。Ta2NiSe5の電気抵抗はTs~330Kで折れ曲がりを示し、低温に向かって指数関数的に増大する。置換元素によらず、Tsに対応する異常は低温側に移動し、電気抵抗の増大も抑制されることがわかり、置換量とTsの変化をまとめた。その結果、TaサイトをVで置き換えることにより、わずか5%程度の置換量でTsが250Kまで強く抑制されることがわかった。一方、NiサイトのCo置換では10%程度の置換量でTsが250Kに到達する。これらの2つの置換物質について磁化率測定を行い、Vが非磁性不純物でCo置換ではキューリワイス的な磁化率の上昇が観測され、磁性不純物的な役割を果たしていることがわかった。特に非磁性不純物でTsが強く抑制される傾向は、Ta2NiSe5が励起子絶縁体であることを支持する結果であった。 元素置換物質を作成する過程でいくつか別の構造を持った結晶を育成した。これらの化合物に関してもEPMAなどを行い、結晶の同定を行った。例えば、構造相転移を示すTa2NiSe7という物質の合成に成功し、電気抵抗測定からこれまで報告例のある試料の中で最も純良なものと同程度の試料を得た。また、励起子秩序の可能性が期待される特徴的な構造を持った物質の作成にも取り組み、Ybを含む新物質を発見し、電気抵抗・比熱・磁化率などの物性測定を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的である励起子絶縁体候補物質のTa2NiSe5においていくつかの元素置換に成功した。励起子絶縁体転移と関係している構造相転移温度Tsの元素置換効果について電気抵抗測定によって明らかにした。また、試料育成のための温度勾配をつけた電気炉の作製も行い、試料育成の条件決めなどの効率を上げた。
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Strategy for Future Research Activity |
置換元素による磁気的な寄与については調べることができたが、キャリア数の変化や構造の温度変化についてはまだ明らかにできておらず、ホール抵抗や格子定数の温度依存性の測定を行なっていく。また、置換可能な元素が他にないかを調べていく。 励起子絶縁体転移の決定的な証拠となる超音波吸収の実験が望まれているが、これまで測定可能な大きな試料が得られていなかった。本研究で行った元素置換した単結晶では従来のものよりも数十倍分厚い結晶が得られ、超音波測定にも耐えうるものであり、超音波の実験も行う。
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Causes of Carryover |
ヘリウム液化装置の不具合のため使用予定だった寒剤使用のための予算が余った。次年度にその分寒剤利用をする予定である。
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Research Products
(2 results)