2021 Fiscal Year Research-status Report
New development of optical spintronics: Toward realization of optical Barnett effect
Project/Area Number |
20K14420
|
Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
仲田 光樹 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, 研究副主幹 (20867105)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | マグノン / スピントロニクス / マグノニクス / 巨視的量子現象 / マグノンJosephson効果 / スピン流 / マグノン輸送 / マグノン凝縮 |
Outline of Annual Research Achievements |
具体的内容:昨年度、研究協力者の高吉慎太郎氏 [甲南大]らのレーザー誘起磁化過程 [S. Takayoshi et al., Phys. Rev. B 90, 085150 (2014): Phys. Rev. B 90, 214413 (2014)]に関する研究知見をフェリ磁性絶縁体に応用し、円偏光レーザー磁場による非平衡マグノン凝縮体の生成機構を解明した。この研究を発展させ、光学的マグノンJosephson効果の理論を構築した。円偏光レーザー照射により、反強磁性絶縁体中のネール磁気秩序相をスピン偏極させることができる。このスピン偏極由来の高周波マグノンを凝縮させて接合系を構成すると、マグノン凝縮体に特有の巨視的量子干渉効果により、スピンJosephson効果が創発することを理論的に解明した。特に、従来の強磁性絶縁体や反強磁性絶縁体中のネール磁気秩序相のものと比較して、スピンJosephson効果の振動周期が桁違いに短くなることを明らかにした。 意義及び重要性:本研究ではBose統計に従うマグノンに特有のスピン量子物性を確立した。金属・半導体中の伝導電子はFermi統計に従う。一方マグノンはBose統計に従う。そのため、マグノンはPauliの排他原理の制約をうけることなく、巨視的量子状態「Bose-Einstein凝縮体」を形成することが可能となり、Josephsonスピン流を創出できることを明らかにした。従来の強磁性体は巨視的磁化が原因で古典的な磁気双極子相互作用が支配的となるため、GHzの低周波マグノンしか励起できない。一方、フェリ磁性・反強磁性体では量子力学的なスピン交換相互作用が支配的となる結果、THzの高周波マグノンを励起・凝縮させる事ができる。このように本研究は「フェリ磁性体・反強磁性体におけるTHzマグノン凝縮体の生成・活用技術」を確立した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
昨年度の成果「光学的Barnett効果」をさらに発展させることにより、「光学的マグノンJosephson効果」の理論を構築することに成功した。円偏光レーザー照射によるスピン角運動量交換機構「光学的マグノンBarnett効果」を活用することにより、反強磁性絶縁体中のネール磁気秩序相をスピン偏極させることができる。特に光学的Barnett磁場の増加に伴い、対称性の自発的破れが生じ、レーザー照射中の非平衡定常下においてマグノンが凝縮し、巨視的コヒーレンスを獲得する。このスピン偏極由来の高周波マグノン凝縮体を活用して接合系を構成すると、非平衡マグノン凝縮体に特有の巨視的量子干渉効果により、スピンJosephson効果が創発することを理論的に解明した。従来の強磁性絶縁体や反強磁性絶縁体中のネール磁気秩序相のものと比較して、スピンJosephson効果の振動周期が桁違いに短くなることを明らかにした。この理論的提案を具現化することにより、超高速スピン輸送を実現させることができると期待できる。また、マグノン熱輸送に内在する量子力学的な性質を非平衡量子場の理論に基づいて解明した。 上記の研究成果を筆頭著者として2編の論文にまとめ、Phys. Rev. B 誌から出版した。さらに、これまでのスピントロニクス理論研究成果をまとめた招待レビュー論文をJPSJ誌から出版し、2021年の7月-8月の二か月間、``JPSJ most downloaded paper''に選出された。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでマグノンの巨視的量子物性由来のスピンJosephsonに着目していたが、マグノンが移動すれば熱(エネルギー)も移動すると考えられる。熱力学の観点(熱とエントロピーとの関係)から考えると、全マグノンが凝縮している場合、熱の移動は伴わないが、有限温度において非凝縮マグノンが存在する場合、それらとの相互作用の影響により、熱の移動が生ずることが予想される。そうした熱輸送の微視的理論「マグノン凝縮体による熱Josephson効果」を非平衡量子場の理論に基づいて解明することを計画している。 さらに非線形光学効果である「マグノン輸送系における高次高調波発生」についても考察し、その微視的機構を解明する。特に、レーザー照射下の磁性絶縁体バルクに着目し、そこでの非線形光学応答、つまり非線形磁化率を解析する。スピン波展開の高次項を取り込むことで、非線形磁化率由来のスピン流を定式化することができ、内在する高次高調波をとらえることができると期待できる。非平衡グリーン関数法を用いて、その微視的創発機構を解明する。また、関連する国内外の実験家とも協力し、本理論研究成果の観測を目指す。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響を受けて、本年度に計画していた国内及び海外出張を実現することができなかったため、出張に係る費用が次年度使用額として生じることになった。次年度使用額は、次年度分研究費と合わせて、新型コロナウイルス感染症の感染状況を踏まえた上で、国内及び海外出張に係る費用として使用し、国内外の研究者と議論を深め、本研究のさらなる推進を図る。
|
Research Products
(5 results)