2020 Fiscal Year Research-status Report
First-principles calculations for strongly-correlated materials with an interdisciplinary approach based on machine learning and physics
Project/Area Number |
20K14423
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
野村 悠祐 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, 研究員 (20793756)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 量子多体系 / 機械学習 / ニューラル・ネットワーク / ボルツマンマシン / 電子格子相互作用 / フラストレート磁性体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、機械学習と量子多体論の分野融合型のアプローチに基づいて、強力かつ汎用的な強相関数値手法を開発し、それを第一原理計算と融合させることによって、強相関物質に対する高精度な定量計算を実現することが目的である。具体的には、1. 強相関数値手法開発、2. 開発した手法の精度検証、3. 現実の系への適用が、研究の主眼である。
本年度においては、まず電子・格子自由度が相互作用しあう模型に対する人工ニューラル・ネットワークに基づいた波動関数法の開発に成功し、これまでの波動関数法よりも優れた精度で解析が可能になることを示した。この成果は、これまで電子間の強いクーロン相互作用によってモット絶縁体となった物質の基本模型である量子スピン模型への適用がほとんどだった現状を打破し、ニューラル・ネットワーク波動関数法の適用範囲を広げるものである。また、手法拡張と同時に、量子スピン模型においては、手法開発・ベンチマークの段階を超えて、これまで厳密解がわかっていない挑戦的模型への適用も開始した。
具体的には、競合するスピン間相互作用によりスピン配置にフラストレーションが生じる2次元のJ1-J2模型ハイゼンベルグ模型への適用を行った。この模型は銅酸化物高温超伝導体の母物質の基本模型としても知られる重要な模型であるが、量子モンテカルロ法が負符号により適用が困難であるため、その相図解明は長年の課題となっていた。今回の高精度なニューラル・ネットワーク波動関数法の適用により、フラストレーションの強い領域で、絶対零度でもスピン配置が秩序しないエキゾティックな状態である量子スピン液体相が存在することが示唆された。これまでのJ1-J2模型ハイゼンベルグ模型の研究でも、量子スピン液体相の存在は示唆されていたが、その相境界も先行研究よりも正確に求めることに成功し、量子スピン液体の存在のより強い証拠を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究で計画している1. 強相関数値手法開発、2. 開発した手法の精度検証、3. 現実の系への適用のうち、スピン自由度だけの量子スピン系においては銅酸化物高温超伝導体の母物質の基本模型である2次元のJ1-J2ハイゼンベルグの適用にまでこぎつけた。まだ、様々に異なる種類の自由度が存在する模型の現実の系への適用は将来の課題であるが、スピン系においては3. 現実の系への適用の段階にまで到達しつつあり、当初の計画以上のペースで研究が進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画においては、人工ニューラル・ネットワーク波動関数によって、系の最低温での性質を理解する絶対零度計算の開発・応用を計画していた。しかしながら、実際の系での実験は有限温度で行われるため、実験と比較できる量を計算するには、有限温度計算への拡張も重要である。当初の予定を少し変更し、1. 強相関数値手法開発の比重を増やして、有限温度計算への拡張にも取り組む。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの蔓延による影響により、参加を予定していた会議がオンラインになったために次年度使用額が生じた。次年度のコロナウイルスの状況にもよるが、主に旅費として次年度使用する予定である。
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