Outline of Annual Research Achievements |
持続可能な社会を実現する上で, 我々が解決すべき課題として環境・エネルギー問題が挙げられる. 当該研究課題では, その解決策として, 人工光合成に着目した. 人工光合成のアンテナ分子として金属ポルフィリン多量体が注目されている. ポルフィリン環全体に広がったπ共役電子系に由来し, 金属ポルフィリン多量体は高い光吸収効率および光エネルギー移行効率を示す. 金属ポルフィリン多量体の光エネルギー移行能は環同志の相互作用, つまりその分子構造にきわめて敏感である. 人工光合成デバイスにおける理想環境の一つである水溶液中において, 水和に伴う金属ポルフィリン多量体の分子構造および電子状態変化が, いかにして, 金属ポルフィリン化合物の励起エネルギー移行過程に対して, 寄与するか明らかにする必要がある. 当該課題の最終目標は, 水和環境下にある金属ポルフィリン化合物を標的とした時分割オージェ電子分光を行い, 水和環境が励起エネルギー移行効率に与える協同作用を明らかにすることである. 最終年では, 高エネルギー加速器研究機構の放射光施設PFにて, 水溶液試料を標的とした過渡軟X線吸収分光実験を実施した. また, 国際会議IWP-RIXSにおいて, 軟X線照射に伴う水和分子の分子構造変化について報告した. さらにX, 線自由電子レーザー施設SACLAにて, 気相分子を標的としたフェムト秒時分割計測を実施し, 将来的な時分割オージェ電子分光実験へ向けた知見を獲得した. また, 国際会議Gordon Research Conferences等で気相標的における時分割計測の結果について報告した. 研究期間全体を通じて, 水和環境下にある金属ポルフィリン化合物を標的とした時分割オージェ電子分光へ向けた基幹技術が構築され, フェムト秒時分割計測や水溶液試料を標的とした時分割計測の知見が得られた.
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