2021 Fiscal Year Annual Research Report
動的不均一場における膜蛋白質の複合体形成機構解明に向けた計算手法の開発
Project/Area Number |
20K14432
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
山本 詠士 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 講師 (00779340)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 不均一場 / 生体膜 / メゾスケール / 反応拡散方程式 / ブラウン動力学法 |
Outline of Annual Research Achievements |
飽和脂質と不飽和脂質で構成される脂質膜では,秩序液体相(Lo相)と無秩序液体相(Ld相)への相分離が生じる.本研究では,動的かつ不均一に相分離が生じる生体膜における膜タンパク質の拡散現象の解明を目指し,反応拡散方程式とブラウン動力学法を組み合わせた2次元のメゾスケールシミュレーション法の開発を行った.本年度は主に,2成分(脂質A,B)混合場における(i)粒子(タンパク質を想定)と場(脂質を想定)との親和性(ポテンシャル壁)の導入,(ii)多粒子系への拡張を行った.粒子と場または粒子同士の親和性,場での粒子濃度をパラメータとして変化させた際の拡散現象の違いについて解析した.粒子の時系列データから,平均二乗変位,拡散係数のゆらぎ,プロパゲータなどの拡散性を特徴付ける統計量を解析した.平均二乗変位の解析から,濃度分布の不均一性の影響により,場を拡散する粒子の拡散係数が顕著なゆらぎを示す異常拡散を示すことがわかった.粒子と場との親和性,場における粒子濃度,粒子同士の親和性によるクラスター化によって,各相(脂質Aまたは脂質Bが多い相)への滞在時間の分布と拡散性のゆらぎに変化が生じることを明らかにした. 研究期間全体を通じてメゾスケールシミュ-レーション手法の開発を行い,2次元の不均一な場の動的な変化がそこを拡散する分子に与える影響を明らかにしたことは,今後のミクロスケールとマクロスケールをつなげたマルチスケールな現象の理解に役立つため意義があるといえる.
|
Research Products
(4 results)