2020 Fiscal Year Research-status Report
Dissipative structures in the non-equilibrium dynamics of chiral liquid crystal droplets
Project/Area Number |
20K14433
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
坊野 慎治 立命館大学, 理工学部, 講師 (60778356)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 液晶 / ソフトマターの物理 / キラリティー / 表面 / 散逸 |
Outline of Annual Research Achievements |
等方相中に分散したキラル液晶滴に熱流を印加すると、流れとトルクの交差相関によってキラル液晶滴の一方向回転が発現することが知られている。本研究では熱流が散逸される過程で、液晶滴の剛体回転と液晶分子の配向回転の競合する散逸機構を選択する要因を解明することを目的とする。2020年度はこのキラルな液晶系に特有の散逸現象を調べるために、広い熱流領域で使用可能な熱流印加装置を構築した。この自作の熱流印加装置において、ヒーターとペルチェ素子をそれぞれ接触させた2枚の独立な基板で、液晶セルを挟むことで高効率かつ安定に液晶試料に大きな(~10mK/μm)熱流を印加することを可能にする。そしてこの熱流印加装置を用いてキラル液晶滴に熱流を印加すると、従来観察されていたキラル液晶滴の回転速度よりも速い速度で、キラル液晶滴を一方向に回転させることができることを示した。次に液晶試料に安定な微小熱流流を加えるために、MEMS技術を利用して、キラル液晶滴の直下に金ナノ薄膜ワイヤーを作製した。金ナノ薄膜ワイヤーの厚みと幅はそれぞれ200nm、300μmであり直流電流が印加されると金が発熱し、キラル液晶滴に局所的な熱流が印加される。印加する電流量と回転速度の関係を定量的に調べたところ、電流印加に伴い金ナノ薄膜ワイヤーからの距離が100μm程度の領域に分散したキラル液晶滴に一方向回転が生じ、これは局所的に0.1mK/μmの熱流を印加されていることを示す結果を得た。以上の結果より、新しく構築した自作の熱流印加装置は0.1mK/μmから数10mK/μmの広いレンジで熱流を調整できることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究で、MEMS技術を利用した金ナノ薄膜ワイヤーを作製し局所的に熱流を印加することに成功し、この技術と従来の技術を統合した熱流印加装置を構築した。これにより0.1-数10mK/μm程度の広い領域の熱流を安定に液晶試料に加えることができるようになった。本年度の目的は熱流長とキラル液晶滴の回転速度の関係を定量的に明らかにすることであったが、今回構築した熱流を定量的に制御する手法と偏光顕微鏡による回転角速度の観察を組み合わせることで、今年度の目的である定量評価が達成された。また今年度に構築した実験系は、次年度以降の研究計画の実行にあたりそのまま適用できるように設計したため、すでに来年度の準備も完了している。以上の点から、ほとんど当初の計画通り研究が進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の研究で、印加する熱流量とキラル液晶滴の回転速度の関係を定量的に評価する実験手法を構築した。今後は、熱流がキラル液晶滴の剛体回転と液晶の配向回転とによって散逸される際に、散逸機構を決定する物理量の特定を行う。注目する物理量として、(1) 基板とキラル液晶滴の間に働く粘性係数、(2) 液晶の配向ねじれの周期または配向弾性係数の2つに注目する。前者は剛体回転としての散逸に、後者は配向回転としての散逸にそれぞれ寄与すると期待される。次年度はこれらの要因候補から散逸モードを選択する決定要因である物理量を特定することを目的に、はじめに液晶の配向ねじれの周期と回転速度の関係を定量的に調べる。
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Research Products
(5 results)