2021 Fiscal Year Research-status Report
Dissipative structures in the non-equilibrium dynamics of chiral liquid crystal droplets
Project/Area Number |
20K14433
|
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
坊野 慎治 立命館大学, 理工学部, 講師 (60778356)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 液晶 / ソフトマター / キラリティー / 散逸 / MEMS |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では等方相中に分散したキラルな液晶滴の回転に伴う散逸構造について取り組んだ。特にキラルな液晶滴に熱流を加えると、キラルな液晶滴が一方向に回転するという散逸現象が観察される。2021年度はキラルな液晶滴に対して局所的に熱流を加え、キラルな液晶滴の回転挙動を観察した。局所的な加熱機構として、MEMS技術を利用して微細加工した金属薄膜を作製した。この微細加工金属薄膜上に液晶滴を導入し、金属薄膜に電流を印加し、ジュール熱をキラルな液晶滴に加えた。 はじめに金属薄膜の構造を一様なワイヤー形状とし、キラルな液晶滴の位置と回転挙動の関係を定量的に求めた。その結果、金属薄膜付近のキラルな液晶滴が局所的に回転することが明らかになった。回転挙動について、散逸理論に基づいて考察を行い、金属薄膜からのジュール熱は非常に効率良く回転に変換されていることが分かった。そして、キラルな液晶滴の回転挙動を調べることで、マイクロ熱流を高い空間分解能で、高い熱流検出精度で検出できることが明らかになった。次にキラルな液晶滴の熱駆動回転の応用例として、金属薄膜に対し、欠陥に見立てたパターニングを行った。このデバイス上にキラルな液晶滴を導入し、金属薄膜に電流を印加しながら回転挙動を観察した。その結果、欠陥状の構造付近のキラルな液晶滴のみ局所的に回転することが明らかになった。これは特に熱流の分布が局所的であっても、キラルな液晶滴の熱駆動回転により可視化されることを示唆している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究で、キラルな液晶滴が熱流下で示す非平衡ダイナミクスにおいて、熱流を局所的に印加すると、その不均一性を反映したダイナミクスが観察されることが明らかになった。特にこれまでの実験系では一様な熱流印加に限られていたが、MEMSにおける微細加工技術を応用することで新しく非一様な熱流下でキラルな液晶滴が示す回転挙動について定量的に調べることが可能になった。従来の散逸理論と今年度得られた実験データを比較することで、キラルな液晶滴が非常に高い効率で熱流を回転に変換しており、このため熱流検出の空間分解能が高いことを明らかにした。 またこの結果は応用上の観点から重要である:キラルな液晶滴の回転挙動を観察することで、マイクロメートルスケールで局所的な熱流を可視化できることを示した。この熱流検出メカニズムは、特に構成要素のスケールが微細で、電気信号を扱うMEMS分野において有用性が高いと期待される。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後はさらにキラルな液晶滴において競合する散逸現象についての理解を深めるため、熱流に加えて、電場等の追加の外場を系に導入する予定である。液晶は誘電率や透磁率の異方性を有するため、電場や磁場の印加により分子配向を制御することができることが知られている。特に等方相中に分散した液晶滴の場合は、アンカリングのない条件下では、配向に対して発生したトルクが、滴そのものを回転させるためのトルクに変換されることが知られている。そこで、今年度までに構築した局所的な熱流印加システムに、電極を統合し、電圧と熱流とを競合させる。この時のキラルな液晶滴のダイナミクスについて偏光顕微鏡を用いてミクロスコピック・時分割で計測し、物理的機構を明らかにする。
|