2023 Fiscal Year Research-status Report
Search for universality in nonequilibrium cooperative phenomena using adherent cultured cells
Project/Area Number |
20K14435
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
足立 景亮 国立研究開発法人理化学研究所, 数理創造プログラム, 研究員 (40849626)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | アクティブマター / 非平衡相転移 / 相分離 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、培養細胞集団のように自らエネルギーを消費して運動する要素の集団(アクティブマター)に注目し、各要素の運動性や要素同士の相互作用に起因した非平衡協同現象の普遍的性質の解明に取り組んでいる。これまで、アクティブ格子ガスやアクティブブラウン粒子といった、斥力相互作用するアクティブマターの基本的なモデルの性質をシミュレーションや理論解析で調べてきた。特に、細胞の接着基板などの効果で空間的異方性が生じると、密度の長距離相関(空間相関関数のべき型の減衰)が現れることを明らかにしてきた。この結果から、斥力以外の相互作用でも一般的に長距離相関が現れるのか、密度以外の量にも長距離相関が現れるのかといった、より基本的な問いに取り組むことを考えた。
アクティブマターでは運動の向きを揃える相互作用(配向相互作用)がしばしば生じることが知られているため、当該年度は配向相互作用や斥力相互作用を含む一般化された相互作用がはたらくモデルを考え、その性質をシミュレーションや摂動論で調べた。その結果、配向相互作用のみが存在する場合でも長距離相関が現れることがわかり、以前の結果は斥力相互作用がはたらく系には限定されないことがわかった。さらに、密度だけでなく、アクティブマター特有の性質であるポラリティ(要素の運動方向の配向度合い)にも長距離相関が現れることがわかった。
本研究では、アクティブマターと非平衡量子系の類似性に注目することで、アクティブマターの量子対応物を理論的に提案してきた。当該年度は、その方向性の研究をさらに発展させ、モデルの数値計算や解析計算に基づいて、量子系のアクティブマターに特有の相転移について調べた。その結果、古典系の典型的なアクティブマターとは対照的に、配向相互作用がなくても運動性が十分大きければ、要素が自発的に向きを揃えた秩序状態が生じうることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究開始時には、実験研究と理論研究を同時に進めていくことを計画していたが、現状では実験研究は進められていない。しかし、実験家とも議論しつつ、自身は広範なモデルシミュレーションや理論解析を行うことによって、非平衡協同現象の普遍性の解明に継続的に取り組んでいる。特に当該年度は、アクティブマターにおける要素間相互作用の種類に依存しない普遍的性質や、アクティブマターの特徴を量子系へと拡張した場合に現れる新しい性質を明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、非平衡協同現象のさらなる普遍的側面を明らかにすることを目指す。特に、アクティブマターの相分離や配向秩序を調べることを中心にして、他の非平衡現象との共通性や相違点を明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
2020年度や2021年度に使用予定だった予算が、新型コロナウイルス流行による学会の中止や実験の停止により、一部しか使われていなかった。その分の予算が繰り越されており、次年度は国際会議における発表のための旅費や、本研究に必要な書籍やコンピュータ関連機器の購入費用として使用する予定である。
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