2020 Fiscal Year Research-status Report
磁力線方向流れがもたらす磁化プラズマ乱流構造形成を3次元非接触計測で解き明かす
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20K14443
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
山崎 広太郎 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 助教 (00782468)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 磁化プラズマ乱流 / トモグラフィ計測 / 流速シア |
Outline of Annual Research Achievements |
核融合発電に用いられる磁化プラズマの中では,乱流が燃料となる粒子や熱エネルギーを逃がす働きをすることが知られている.微小なサイズの乱流自体が粒子・熱を逃がす働きを持つ一方,この微小な乱流が大きなサイズの渦を形成して粒子・熱の閉じ込めを悪化させたり,逆に閉じ込めを良くすることが理論・実験的に知られている.上記のように微小なサイズの乱流が大きなサイズの渦を形成することを構造形成と呼ぶ.磁化プラズマ中の構造形成は粒子・熱閉じ込めに大きな影響を及ぼすため,閉じ込めを悪化させる渦・良くする渦が形成されるメカニズムを明らかにすることは核融合発電を実現する上で解明しなければならない課題の一つである.近年,この磁化プラズマ中の構造形成の選択に磁力線方向の流れが関係していることを示す理論が発表された.本研究では,磁化プラズマ乱流が引き起こす構造形成と磁力線方向の流れシアの関係をレーザー計測とイメージング計測を用いて明らかにすることを目的としている. この目的を達成するために,本研究の4年間で必要な計測器の立ち上げ,計測器の性能検証,立ち上げた計測器を用いたプラズマ乱流の計測,そして流れシアに対する乱流の応答を検証するスキャン実験を行う.本年度はプラズマの流れを計測する上で必要なレーザー計測システムの改良,およびプラズマ断面内で生じている乱流現象を2次元計測するイメージング計測(トモグラフィ計測)の新たな較正手法の開発を行った.レーザー計測では,計測に用いる波長を見直すことにより,レーザーで誘起される蛍光強度を1.8倍程度に増加させることができた.また本研究の要となるトモグラフィ計測では,直径4mmの冷陰極管とアクチュエータを用いた較正手法を考案し,プラズマ断面構造をこれまで以上に正確に再構成することが可能になった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は研究遂行に必要な計測器(LIF計測,トモグラフィ計測)の性能向上と較正手法・解析手法の開発に専念した.LIF計測では,流速の径方向分布を取得できるようにするために計測に用いる励起光の見直しを行った.プラズマから生じる発光スペクトルを見直すことで,LIF計測により有利な励起準位を見つけることができた.新たに採用した励起準位を用いることで,信号強度を1.8倍程度向上させることができた. また,トモグラフィ計測では磁化プラズマ乱流の空間構造を抽出し,乱流の3次元波数スペクトルを取得することが重要になる.そのため,トモグラフィを用いた発光量分布を正確に再構成できていることを確認する手法と,プラズマ断面の空間構造の定量的な評価手法が必要になる.そこで本年度は,トモグラフィの計測領域内で点灯させた直径4mmの冷陰極管の位置を数μm程度の精度で制御することにより,光源の位置とトモグラフィ計測システムで得られる発光の視線積分量との対応関係を実験的に取得する手法の開発を行った.この較正手法を開発することにより,トモグラフィ計測で用いる視線積分発光量計測の相対感度較正や計測視線の設置精度等を考慮せずに正確に発光量分布を再構成することが可能になった. 本研究の今後の実験では,一つのプラズマ断面を計測する視線を132視線から191視線に増やして計測する.そのため,多数の視線の感度較正や設置角度等を考慮した煩雑な較正を行う必要なく正確に発光量分布を再構成できる本較正手法は今後の実験を遂行する上で重要な技術となる.得られた較正データからトモグラフィシステムの空間分解能を評価する手法として,特異値分解を用いた低ランク近似による評価手法を考案しており,これまでに実現したトモグラフィ計測の較正手法とあわせて論文化を進めている.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究により,研究遂行に必要なLIF計測の改良とトモグラフィ計測の較正手法の確立が完了した.次年度からは,(i)トモグラフィ計測の空間分解能評価手法の確立 (ii)トモグラフィ計測の分解能向上のための計測視線設計 (iii)高空間分解能トモグラフィ2系統を用いた乱流3次元波数スペクトル取得方法の確立 を行い,本研究遂行の要である波数スペクトルを用いた磁化プラズマ乱流の分類を可能にする. (i)本年度確立したトモグラフィ計測システムの較正手法で得られた感度分布データを用いて,トモグラフィ計測システムの空間分解能を定量的に評価する手法を開発する.具体的には,新たな較正手法で得られた感度分布データ(投影行列)に対して特異値分解を用いた低ランク近似を行い,低ランク近似された行列データの列データ同士の相関から空間分解能を評価する手法を考案している.空間分解能評価手法が確立したら,新たなトモグラフィ較正手法の内容と一緒にまとめて論文を執筆する. (ii)次年度に開発する空間分解能評価手法を用いて,プラズマ中心部でも周方向モード数m=4程度の揺動を観測できる視線配置の考案を行う.トモグラフィの空間分解能を高めるために,現在円柱プラズマの軸方向3箇所に配置しているトモグラフィ計測システムを2箇所に集中させ,1系統に用いている視線を132本から191本まで増やし,空間分解能の向上を図る.視線配置の設計には(i)で考案した空間分解能評価手法を用いて定量的に検討を行う.設計・導入が完了したら,本年度開発したトモグラフィ較正手法と空間分解能評価手法を用いて,所望の性能が得られていることを確認する. (iii)空間分解能を向上させたトモグラフィ計測システムを2系統同時に用いることで磁化プラズマ乱流の3次元波数スペクトルの計測を行う.
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由として,(i)昨年度初めよりCOVID-19の蔓延により予定していた学会参加がオンラインに変更され,旅費を出す必要がなくなってしまったこと (ii)緊急事態宣言発令に伴い在宅勤務をする日数が多くなり,予定通り実験を遂行することが困難であったこと, が挙げられる. 次年度使用額分は,昨年度遂行できなかった実験に必要な物品購入に充当する.
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[Presentation] PANTAプラズマにおけるモード間結合ダイナミクスの解析2020
Author(s)
山崎 広太郎, 藤澤 彰英, 永島 芳彦, 文 贊鎬, 稲垣 滋, 佐々木 真, 小菅 佑輔, 山田 琢磨, 糟谷 直宏, 井戸 毅, 河内 裕一, 赤司 智宏, 小林 大輝, 西村 大輝
Organizer
日本物理学会 2020年 秋季大会
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[Presentation] 直線型磁化プラズマPANTAにおける揺動の3次元ダイナミクス2020
Author(s)
文贊鎬, 稲垣滋, 永島芳彦, 山崎広太郎, 糟谷直宏, 小菅佑輔, 佐々木真, 井戸毅, 山田琢磨, 赤司智宏, 小林大輝, 西村大輝, 藤澤彰英
Organizer
日本物理学会 2020年 秋季大会
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