2022 Fiscal Year Research-status Report
大域的電磁ジャイロ運動論の構造保存アルゴリズム開発
Project/Area Number |
20K14449
|
Research Institution | National Institutes for Quantum Science and Technology |
Principal Investigator |
白戸 高志 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 六ヶ所研究所 核融合炉システム研究開発部, 研究員 (10827520)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 運動論プラズマ / 数値計算法 |
Outline of Annual Research Achievements |
DarwinモデルはMaxwell方程式から電磁波を落とした非相対論極限において成立する近似モデルであり、核融合プラズマのダイナミクスを記述するためにしばしば用いられる。1971年に報告されたKaufmanとRostlerの論文以来半世紀以上に渡り、このシステムはCoulombゲージを用いなければ様々な保存則が破られてしまい成立しないと信じられてきた。しかしながら、優れた数値アルゴリズムを開発するためにはより対称性のよいLorenzゲージの方が適していることが確認されたため、従来モデルの拡張を試みた。モデルの導出過程を再検討した結果、従来はベクトルポテンシャルの2階微分のみを落としていたが、電荷保存則をゲージの選択に依存させないためには、同時に落とさなければならない項が存在することを確認した。本研究では、この項を落とすために必要な数学的条件を示し、電磁波を無視すると宣言した場合、ゲージに依存せず落とすことができるという物理的根拠を与えることに成功した。また、新しい電磁場のモデルは電荷保存則を成立させることのみを考慮して理論の再構築を行ったが、それに付随して運動量やエネルギーの次元を持つ物理量もまた、LorenzゲージとCoulombゲージの両方に対して保存することを証明した。この研究成果をまとめた論文を学術誌Physics of Plasmasに投稿し、令和4年度末に受理されている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本課題の最終的なゴールはVlasov-Darwin系に対する保存型アルゴリズム開発の完了と位置づけられている。前述の通り、より精緻な数値シミュレーションを行うことを目的としてDarwinモデルをLorenzゲージに拡張したが、このモデルは従来型のDarwinモデルと物理的に等価であるとは認知されてこなかった。そこで、アルゴリズム開発を行うに先立って論文の投稿を行い、査読プロセスを通して今回提案するモデルが物理的に妥当であることの承認を受けることを優先した。そのため、査読期間中は本研究の活動を停止し別課題に着手していたため、当初の期限までにアルゴリズム開発を行うという目標は未達である。
|
Strategy for Future Research Activity |
論文の受理を確認した時点でアルゴリズム開発に着手し、本報告書の執筆時点で既にアルゴリズム開発を完了している。現在は提案するアルゴリズムに基づくプログラムを用いた数値実験に着手しており、想定通りに保存則が満たされることの確認及び数値的に安定なシミュレーションを行うための実装法の精査を行っている。順調に進めば5月中には全ての数値実験が終了する予定であり、学会発表や論文投稿を含め、年度内には本研究課題を十分な余裕を持って完遂する事ができる見通しである。
|
Causes of Carryover |
当初予定では米国物理学会プラズマ物理分科会に参加する事になっていたが、発表申込の時点で業務上真に必要ではない海外渡航を禁じられていたため、対面開催となる当該学会への参加を見送りする事となった。また、国内学会についても一部で対面開催を再開しなかったものがあることから、旅費の未使用額が非常に大きくなっている。今年度は海外渡航が解禁されていることから、昨年行う予定であった米国物理学会への参加を行う予定である。
|