2020 Fiscal Year Research-status Report
先進的無電極プラズマ電磁加速法の電磁加速力に支配的な条件解明に基づく設計理論構築
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20K14452
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
古川 武留 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 特任助教 (70845122)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 電気推進機 / 高周波プラズマ生成 / m = 0半周期加速法 / 回転磁場加速法 / 電流電源インバータ回路 / 静電・電磁プローブ計測 / レーザー誘起蛍光法 |
Outline of Annual Research Achievements |
無電極スラスタコンセプト実現に向けた更なる推進性能向上のアプローチとして,プラズマと直接接触しない外部設置加速アンテナによるプラズマの加速排気効率の増大が挙げられる.本研究課題では,プラズマ追加加速型無電極電気推進法である,「m = 0半周期プラズマ加速法(m:電場の周方向モード数)」と「回転磁場加速法」の,電磁加速力に支配的な条件解明に基づく推進機設計理論の構築を目的とする. 本年度では,実験的手法によるm = 0のプラズマ加速効果最適化およびスケーリングモデル構築のため,加速アンテナ用の大電流インバータ電源回路の設計開発を進めた.コンデンサバンクによる充電とHブリッジ回路による加速アンテナ共振放電制御を両立し,これにより電流振幅~800 Aまでの印加交流電流振幅を達成している.この制御により,ターゲットである交流周波数kHz~数十kHz帯での電流印加制御も可能である. 追加速スキームを考慮した推進機サイズ含むスケーリングモデル構築に際して,先行研究とは異なる口径(直径~70 mm)を持つ直線型段付き放電管を用いたスラスタテストモデルを設計・構築し,所属研究室所有のスラスタテストチェンバーに設置した.外部磁場源用電磁石磁気回路および高周波プラズマ生成アンテナ使用によるプラズマ放電は確認済みである. 回転磁場加速法においては,回転磁場の回転周波数依存性評価を静電・電磁プローブ計測と分光計測により行った.電磁加速に優位となる周波数条件が得られた一方,プラズマ中に磁場が完全に浸透しないある一条件において,プラズマ中の高い電子密度増加が得られ,反磁性電流に起因する推力上昇の結果を得た.高い密度上昇の物理メカニズムは現在調査中の段階にある.レーザー誘起蛍光法によるイオン流の絶対値計測では,回転磁場駆動によるイオン流速ベクトルの変化から,プラズマ流加速効果を定量的に評価した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
m = 0半周期加速法に関して,大電流電源回路や電磁加速用スラスタモデルといった装置設備の設計・作製は予定の範囲内で完了することができたと考える.しかしながら,当初計画ではプラズマパラメータと時空間変動磁場計測による加速条件依存性調査を行い,電磁加速効果のスケーリング則を明らかにすることを目標としていたが,まだ十分には行えていないため,これは早急に推進していく.この実験研究の遅れには,研究室所有のプラズマ生成用高周波電源と整合用マッチャーの不具合が関係しており,耐電力3 kW級のマッチャーの設計を行い,現在業者に作製を委託している.プラズマの非接触計測が可能な発光分光器の購入も,当初計画と異なり後回しとなったが,これも現在要求仕様は決定済みであり,発注決定の段階にある. 回転磁場加速法では,電磁加速力最適化に向けたパラメータ制御条件の導出に際して,各種パラメータサーベイを系統的に進めることができた.特に,加速効果およびプラズマ流の空間的特性評価からその周波数依存性がみられ,上記同様,電磁加速に優位となる条件を実験的に取得することができた(これら関して,投稿中論文一編,発表は6件に貢献).当初の予定では,3方向イオン流速絶対値計測をより広範な計測範囲で行う予定であった.しかしながら,レーザー波長調整や光軸アライメントの不具合が少なからず生じ,結果をまとめる段階には至らなかった.現在では,レーザー誘起蛍光法における高速周波数掃引を取り入れたイオン流計測の効率化が図られており,今後この計測実験を進めていく. 上述から総合的に判断して,今回は上記区分に相当すると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
設計開発した大電流電源およびスラスタテストセクションを使用して,m = 0加速の駆動条件変化におけるプラズマパラメータ,および時空間変動磁場計測により,電磁加速効果を最適化に向けた電磁加速力のスケーリング則導出を進める.非接触プラズマ計測法である発光分光法(レーザー誘起蛍光法,衝突輻射分光法など)を駆使し,スラスタスキームにおけるプラズマ物理解明から,他のプラズマ応用野分野への応用を進めていくことが望まれる. いずれの追加加速法において,これまで行ってきた静電・電磁プローブ計測を含む実験的手法では困難となる,3次元の複雑な時間変動磁場とプラズマ流の相互作用の解明には,今後流体モデルによる数値計算研究も重要と考える.数値解析によるこの詳細な物理解明も検討し,電磁加速法の設計理論構築を図る.
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Causes of Carryover |
次年度仕様額が生じた理由:参加した国際・国内学会がすべてオンライン形式で行われ,これによる旅費の負担がなくなったため.また,当初予定した装置の購入を見送ったため. 使用計画:購入を見送った装置の購入に使用する.
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