2021 Fiscal Year Research-status Report
Theoretical study on supernova neutrinos
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20K14457
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
加藤 ちなみ 東京理科大学, 理工学部物理学科, 助教 (40850946)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 超新星爆発 / 超新星ニュートリノ / ニュートリノ振動 |
Outline of Annual Research Achievements |
太陽よりも非常に重たい恒星は進化の最期に超新星爆発と呼ばれる大規模な爆発を起こす.その爆発メカニズムや爆発前の内部構造は未だに解明されておらず,銀河や太陽系の化学組成進化の解明や新しい物理発見へとつながる重要な研究命題である.本研究では,これまでの超新星爆発に関わる研究を総合して「精密性」と「連続性」という観点から超新星爆発におけるニュートリノ放出計算を理論的に見直し,その命題に貢献することを目指す. 今年度は,「精密性」の観点で問題となっているニュートリノ集団振動に注目して研究を行った.集団振動は,ニュートリノ同士の相互作用によってニュートリノフレーバーが変化するニュートリノ振動の一種である.本来はこの効果を爆発の数値計算に取り入れる必要があるが,振動スケールが内部の密度・温度の変化スケールと比較して非常に短いため,前者を解像する爆発計算はほぼ不可能である上,その非線形なふるまい自体にも未解明な点が多く残されている.そこで,本研究ではまず細かいスケールの物理を正確に追うことに適しているモンテカルロ法を用いたニュートリノ輸送計算コードを開発して,集団振動のふるまいについて詳細に調査した. 具体的には,これまでに開発した古典的なニュートリノ輸送計算コードに集団振動の効果を取り入れて,物質散乱と同時に扱うことができるコードに拡張した.今までにニュートリノ振動をモンテカルロ法で取り扱った前例はないため,代表的な先行研究との比較を用いて完成したコードの正当性を評価して論文にまとめた.その際に,非常に簡易的な状況における集団振動の非線形なふるまいも調査し,先行研究とよく一致していることも確認している.また,さらにニュートリノと物質の散乱の効果が集団振動の非線形なふるまいに与える調査を行った.結果として,反応率の大きさに依存して,物質散乱が集団振動を強める効果があることが分かった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度の目標として計画していたニュートリノ集団振動の研究に着手し始め,以下の3つの成果を達成することができたため,上記の評価になった. ①ニュートリノ集団振動を考慮したモンテカルロ輸送計算コードの開発を行った. ②ニュートリノ集団振動の非線形ふるまいの調査を行い、論文執筆を行った. ③ニュートリノと物質の散乱効果を取り入れ、それが集団振動の非線形ふるまいに与える影響の調査を行った.
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Strategy for Future Research Activity |
今後も集団振動の研究を継続して行う予定である.これまで,非常に簡易的な状況下における集団振動の計算のみを行ってきたので,現在課している様々な仮定を取り除き,徐々に現実的な状況へと計算を拡張していき,集団振動が超新星ニュートリノスペクトルに与える影響について調べる.
また,現在扱っている超新星爆発段階の次の進化段階に当たるPNS冷却段階のニュートリノ放出の精密化にも取り組む.PNS冷却段階では直接ウルカ過程と修正ウルカ過程が重要になることが知られている.修正ウルカ過程由来のニュートリノはエネルギーが低いため観測不可能とされており,これまでの計算に組み込まれていなかった.しかし,観測技術の発展によりその可能性がでてきたため,本研究では修正ウルカ過程をPNS冷却計算に組み込み,冷却過程が移り変わる様子を定量的に調べてそれらの観測可能性を議論する.具体的に,修正ウルカ過程によるニュートリノ放出を場の理論を用いて定式化する.その後,共同研究者が開発したPNS冷却計算コードにこれを組み込み,爆発から数分までの長時間計算を行う.得られたニュートリノ光度とスペクトルから観測装置における検出数を見積もり,冷却過程の移り変わりと爆発後のどの時間までニュートリノが観測可能かについて議論する.
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染蔓延を受けて、多くの学会や研究会がオンラインで行われるようになり、自身の研究成果発表のために確保していた旅費の出費が大幅に減ってしまったため.
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Research Products
(5 results)