2021 Fiscal Year Research-status Report
回転ブラックホール近傍における高エネルギー現象の探求
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20K14467
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小笠原 康太 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(PD) (30869045)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 一般相対性理論 / ブラックホール |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年にM87銀河中心のブラックホール候補天体がつくるシャドウが初観測された.この中心天体は高速回転している可能性が指摘されており,本研究対象である回転ブラックホールが有力候補である.中心天体がブラックホールであるか否かを決定するためには,ブラックホールを特徴付ける事象の地平面近傍からの情報を得られる観測可能量を見いださなければならない.そこで本研究では,先述のブラックホールシャドウに関連する,事象の地平面近傍からの脱出現象に関する考察を進めている. 光の脱出現象において,ブラックホール近傍に直目していた昨年度の解析を発展させ,より広い領域からの脱出可能パラメータの分類と,脱出確率の計算を行った.具体的には(i)宇宙物理学的に重要となる最内安定円軌道(ISCO)から落下していく光源,(ii)光源の非赤道面・遠方への拡張,の2通りの解析を行った.まず(i)に関しては,落下軌道にある光源の固有運動が脱出確率に与える影響を議論した.ISCOから落下し始めた初期段階では回転方向の固有運動が卓越し,任意のブラックホールスピンにおいて50%を超える脱出確率を示した.さらにドップラー効果(外向きの相対論的ビーミング)によって,光源の運動方向に放射された光は遠方で青方偏移することが明らかになった.(ii)では,臨界Kerrブラックホール時空において,非赤道面も許した任意の時空点から放射された光が遠方まで到達可能な必要十分条件を解析的に完全に決定し,光の軌道を決める2次元パラメータ領域上に可視化する手続きを開発した.脱出可能領域が定性的に変化する臨界角が存在し,この角度は高エネルギー粒子衝突の特徴的な角度と関連していることを指摘した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通りに研究が進展しているため.
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Strategy for Future Research Activity |
脱出光のエネルギースペクトルなど観測可能量の評価を行い,高エネルギー粒子衝突などの回転ブラックホール近傍における高エネルギー現象と対応付けた解析にも取り組んでいく.
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大による影響で,予定していた研究会や学会への参加がキャンセルになったため.この間に報告できなかった研究成果を,次年度に報告するための出張費用として使用することを計画している.
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