2022 Fiscal Year Research-status Report
回転ブラックホール近傍における高エネルギー現象の探求
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20K14467
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小笠原 康太 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(PD) (30869045)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 一般相対性理論 / ブラックホール |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年にM87銀河中心のブラックホール候補天体がつくるシャドウが初観測された.この天体は高速回転している可能性が指摘されており,本研究対象である回転ブラックホールが有力候補である.中心天体がブラックホールであるか否かを決定するためには,ブラックホールを特徴付ける事象の地平面近傍からの情報を得られる観測可能量を見いださなければならない.そこで本研究では,先述のブラックホールシャドウに関連する,事象の地平面近傍からの脱出現象に関する考察を進めている. 光の脱出確率において,ブラックホール近傍の特徴をより正確に捉えるために「near-horizon geometry」とよばれる,地平面近傍の高い対象性を反映した解析手法を用いて,脱出確率の解析的定式化を行った.宇宙物理学的に重要となる最内安定円軌道を取り続ける粒子から放たれる光は,高速回転ブラックホールのごく近傍まで50%を超える脱出確率を示し続け,無限遠から地平面へ漸近していく軌道を取る光源から放たれた光は地平面直前まで有限の脱出確率を取ることが可能であることを示した. 回転ブラックホールからのエネルギー引き抜き過程に対するバックリアクションの定式化に関する研究も行った.帯電する球対称ブラックホールにおける電荷を持つスカラー場によるエネルギー引き抜き過程に対して,波動方程式を地平面近傍の解と無限遠方の解をある仮定のもと無矛盾に接続し,時空全域で適応可能なエネルギー運動量テンソルを計算した.これを用いてエネルギーが引き抜かれる過程おけるブラックホールの質量と電荷の変化を計算する研究も進めている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通りに研究が進展しているため.
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Strategy for Future Research Activity |
光の脱出確率における光源の固有運動の効果を明らかにし,観測可能量に対するより正確な理論的予言を与えていく.
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大による影響で,予定していた研究会や国際学会への参加がキャンセルになったため.この間に報告できなかった研究成果を,次年度に報告するための出張費用として使用することを計画している.
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