2021 Fiscal Year Research-status Report
Exploring fundamental variables of gravity through early universe observations
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20K14468
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
青木 勝輝 京都大学, 基礎物理学研究所, 特別研究員(PD) (80822288)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 重力理論 / 宇宙論 / 量子重力理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
一般相対論と量子論の不整合性やダークエネルギー、インフレーションといった宇宙論に残された数々の謎の存在は一般相対論を超えた重力理論の必要性を示唆している。宇宙は大きなスケールでは空間的に一様等方であり、このような対称性の高い時空の解析においては有効場の理論の手法が役立つ。有効場の理論の手法では、対称性(及びその破れ)を用いて模型を系統的に分類する。これによって模型を特徴づける観測量や無矛盾性関係、他の模型との明白な違いが発見可能となり、観測から様々な模型を包括的かつ系統的に検証することが可能となる。本課題ではこれまで用いられてきた宇宙論の有効場の理論の手法を他の対称性破れパターンに拡張し、スカラー場により宇宙膨張が実現される宇宙模型とベクトル場の宇宙模型の間の違いを普遍的に特徴づける理論パラメータを発見することに成功した。これにより2つの模型を統合的に扱うことが可能となり、今後の模型検証に有益となる定式化を構築した。またSO(N)対称性の下で運動方程式が2階となる複数スカラー場の一般的作用を具体的に構築した。特にSO(3)対称性を持つ場合には固体インフレーションと呼ばれる宇宙模型が可能であり、この模型は通常のインフレーション模型とは異なった時空の対称性破れパターンを生み出す。我々の見つけた作用は固体インフレーションへの微分補正を記述し、これまで知られていない非ガウス性などを生み出すと期待される。他にも散乱振幅のユニタリー性を用いた低エネルギー有効理論の整合性条件に関する研究なども行い、特に一般相対論と素粒子標準模型の整合性は10^16 GeVよりも低いエネルギースケールで新物理が必要となることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では捩率をもつ理論を具体的に解析し、その観測的特徴を明らかにすることを課題としていたが、理論が複雑であることに起因する技術的困難さがあることが明らかとなった。そこで当初の計画とは異なるが有効場の理論を用いて宇宙論の解析を行うことにした。有効場の理論を用いることで包括的な模型検証を行うことが可能であり、おおむね順調に研究が進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
宇宙論の有効場の理論を用いると様々な宇宙模型を系統的に検証することが可能となる。特に我々の定式化した手法を用いることで、捩率をもつ模型を含む、様々な対称性破れパターンに対する宇宙模型を統一的に解析することが可能である、そこで今後は宇宙論の有効場の理論をより発展させる。またそれと並行して、散乱振幅を用いることで有効場の理論と背後にある基礎理論の間の整合性条件を探求する。このように現象論と理論研究の両者を相補的に用いることで初期宇宙を用いた重力理論の検証という課題を行うことにする。
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Causes of Carryover |
当初はCOVID-19の状況が改善し国際研究会や研究打合せで国内外への研究出張を行えることを期待していたが、COVID-19の影響が今年度も続き、これらの出張を中止とせざるを得なくなってしまったため次年度使用額が生じた。しかし、今年度になり入国条件が緩和されるなど状況の改善が見えてきたため、状況に応じて国内外の研究出張を執り行う。また自身の出張にも加えて、当初の計画ではなかったが、研究会の開催にも当該科研費を使用し、COVID-19により失われた現地での情報収集・議論を再開していく予定である。
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Research Products
(16 results)