2020 Fiscal Year Research-status Report
宇宙論的大スケールと小スケールの強重力領域における相対論を拡張した重力理論の検証
Project/Area Number |
20K14471
|
Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
加瀬 竜太郎 東京理科大学, 理学部第二部物理学科, 講師 (10756406)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 暗黒エネルギー / 拡張重力理論 / 中性子星 / ブラックホール |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では暗黒エネルギーの起源解明という物理学における今世紀最大の課題の一つの解決を目指し,一般相対論を内包する一般的な拡張重力理論に基づき当該年度は主に以下の研究を行った. 1) 暗黒物質と暗黒エネルギーが相互作用する理論に関するゲージに依存しない宇宙論的摂動論の解析手法の確立 近年,宇宙の密度揺らぎの振幅とハッブルパラメータという二つの独立した観測量に関して,その観測値が高赤方偏移領域と低赤方偏移領域とで食い違うという二つの不一致問題が指摘されている.このうち,前者の不一致問題に関しては暗黒エネルギーと暗黒物質の相互作用,特に運動量輸送型の相互作用項を導入することで緩和可能である.本研究では,このような相互作用を一般的なラグランジアンとして拡張重力理論に組み込み,ゲージに依存しない方法で理論の安定性の条件,及び可換測量の時間発展を理論的に計算する上で必要となる摂動方程式の導出を行った.この枠組みは非常に一般的なものであり,様々な理論模型にこの枠組みを適用することが可能である. 2) 拡張重力理論における中性子星解の一般的な摂動論の枠組みの構築 上記の研究は宇宙論的な大スケールにおける研究であったことに対し,こちらの研究では局所天体のような小スケールにおける拡張重力理論模型の摂動論の枠組みとして一般的な拡張重力理論と完全流体の作用を静的球対称時空周りで二次まで展開し,摂動方程式と理論の安定性の条件を導いた.2015年に初めて直接検出され現在も活発に観測されている重力波は重力理論を検証していく上で非常に重要な要素となっている.現在観測されている重力波は主にブラックホールや中性子星といった局所天体の連星から放たれる重力波だが,拡張重力理論における中性子星解の安定性を一般的に精査するための枠組みはこれまで存在せず,今後の重力波観測の発展を鑑みると早急に解決すべき問題であった.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」において説明した研究は,それぞれJOURNAL OF COSMOLOGY AND ASTROPARTICLE PHYSICS誌とPHYSICAL REVIEW D誌に掲載された.また上で挙げた研究以外にも,拡張重力理論における中性子星の摂動論の枠組みを用いた具体的な理論模型の安定性の解析に関する研究,及びベクトル・テンソル理論における中性子星の自発的ベクトル化に関する研究を行い,これらもJOURNAL OF COSMOLOGY AND ASTROPARTICLE PHYSICS誌,PHYSICAL REVIEW D誌にてそれぞれ掲載されている.また,コロナ禍により多くの国際会議や研究会が中止となった中,zoom開催となった国際会議にて一件の招待講演を行っている.2020年度に行った研究は,これから本研究課題を推進していく上で必要不可欠な土台部分に相当する.引き続きコロナ禍による研究上の困難は付き纏うが,上記のことから研究計画はおおむね順調に進展していると言える.
|
Strategy for Future Research Activity |
2021年度は,「研究実績の概要」において挙げた研究成果を更に推し進め,より広範な拡張重力理論に適用することができる中性子星解の摂動論の枠組みへと一般化することを第一の目標とする.更に,現在までに提唱されてきた様々な中性子解についてこの結果を適用し,安定性を網羅的に調べあげることが第二の目標である.また,摂動方程式を用いて拡張重力理論における中性子星解の可換測量の定式化を行うことを第三の目標とする.
|
Causes of Carryover |
コロナ禍によって業務量が増大していることにより,研究活動がやや停滞気味となったことによる.
|