2020 Fiscal Year Research-status Report
三次元一般相対論的電磁流体シミュレーションで迫る活動銀河核ジェットの力学進化
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20K14473
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
松本 仁 福岡大学, 公私立大学の部局等, ポスト・ドクター (70722247)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 活動銀河核ジェット / 流体不安定性 / 数値シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、活動銀河核中心にある巨大ブラックホール近傍からのジェット駆動および、銀河間空間でのジェットの伝搬を無矛盾に解き、活動銀河核ジェットの力学進化を統一的に理解することである。本年度は、銀河間空間を伝搬する際のジェットの安定性を調べる研究を行なった。
活動銀河核ジェットは伝搬する際、ジェットとジェットを取り囲む媒質との圧力差によりジェット半径が動径方向に振動する。ジェット境界を流れる流体とともに動く系に移るとこの振動を誘起する圧力勾配力とバランスする慣性力がドライビングフォースとなり流体不安定性が成長し、ジェット境界が崩れる。ジェット境界が崩れ、ジェット外媒質との混合が生じればジェットは減速するため、ジェット境界の安定性は、収束した活動銀河核ジェット構造を維持するうえで非常に重要である。そこで数値シミュレーションを用いて磁場に対する活動銀河核ジェットの安定性を調べた。まず、動径方向一次元の時間発展を追う数値シミュレーションを行い、ジェットの速度が光速で一定であるという仮定をし時間軸とジェット伝搬軸を置き換えることで、ジェットの軸対称定常構造を構築した。このジェット構造を三次元シミュレーションの初期条件とし、磁場に対するジェットの安定性を追った。その結果、ジェットにトロイダル磁場が存在する場合には、磁気張力によりジェット境界で成長する振動にともなう流体不安定性の成長が抑えられることがわかった。この成果は、Monthly Notices of the Royal Astronomical Society誌にて出版済み(Matsumoto et al. 2021)である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究で、ジェットのトロイダル磁場がジェット境界で成長する振動にともなう流体不安定性に対し抑止力として働くことがわかった。一方で、活動銀河核ジェットは銀河間空間を伝搬する際、磁気エネルギーよりも物質のエネルギーの方が優勢であることがわかっている。活動銀河核ジェットの力学進化を統一的に理解するため研究プロセスとしては、ジェット伝搬中における磁気散逸の程度具合を調べる次のフェーズへと移行した。本研究課題申請当時より、ジェットの磁気散逸プロセスとして、磁気極性反転ジェットのジェット伝搬中における磁気中性面での磁気リコネクションに注目している。次年度は計画通りこれらの果たす役割について解明する研究を遂行する予定でおり、研究計画自体は、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
活動銀河核ジェットは、銀河中心にある巨大ブラックホールの回転エネルギーを磁場を介して引き抜き駆動されると期待されている。その際、エネルギーの形態としてはポインティングフラックスと呼ばれる電磁的なエネルギーの流れとして現れる。太陽の磁場はその極性が11年周期で反転することが知られているが、ブラックホール周りに形成される降着円盤の磁場も円盤ダイナモ起源により円盤の10回転程度のタイムスケールで極性が反転することがシミュレーション研究により示唆されている (e.g, Brandenburg et al. 1995)。降着円盤の磁場が反転すると、いずれその磁場はブラックホールへと落ち込むためブラックホールの磁場の極性も周期的に反転する。ブラックホールの磁場が反転すると駆動されるジェットの磁場の極性も周期的に反転することが想定される。そこでこの磁気極性反転ジェットの伝搬中における磁気散逸・加速プロセスを数値シミュレーションを用いて明らかにする研究を行う。特に磁気極性反転のタイムスケールに対する磁気散逸・ジェットの加速具合を明らかにすることをメインテーマとする。
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Causes of Carryover |
参加を予定していた国際会議や研究会がコロナウイルスの爆発的な感染拡大により開催が中止となったためその分の旅費が未使用となり次年度使用額が生じた。本研究計画では、大規模な数値シミュレーションを行う。データ保存用にストレージを購入予定であるが、次年度使用額分を使って当初の計画よりストレージを拡充する予定である。
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