2020 Fiscal Year Research-status Report
Determining the structure of the Higgs sector by precisely evaluating constraints of perturbative unitarity
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20K14474
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Research Institution | Kitakyushu National College of Technology |
Principal Investigator |
菊地 真吏子 北九州工業高等専門学校, 生産デザイン工学科, 助教 (20824642)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 素粒子現象論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、アイソスピン2重項スカラー場2つで構成される拡張ヒッグスモデル「Two Higgs doublet model (THDM)」に着目し、高輝度LHCでの重いヒッグス粒子の直接探索とILCでのヒッグス結合の精密測定によるシナジー的方法でモデルの検証可能性を研究した。発見された125GeVヒッグス粒子の結合定数は標準理論の予言とLHC実験での測定精度の範囲内で無矛盾であり、近アライメントシナリオ(ヒッグス粒子の結合が標準理論とほぼ等しいシナリオ)が有力とされており、研究する高いモチベーションがある。この近アライメントシナリオでは、重いヒッグス粒子達の崩壊モードは125GeVヒッグス粒子への崩壊が支配的になり(H→hh, A→HZ)、かつ125GeVヒッグス粒子の結合はわずかに標準理論の予言値からずれ得る。高輝度LHC実験ではそれらの重いヒッグス粒子達の崩壊モードは検証可能モードであり、その直接探索により質量に下限を与えることができる。更に、125GeVヒッグス粒子の結合定数についてILC実験での精密測定が期待されており、わずかにでも標準理論の予言値からのずれが測定されれば重いヒッグス粒子の質量に上限を与えることができる。そこで本研究では、THDMの近アライメントシナリオを高輝度LHCでの直接探索とILCでのヒッグス結合の精密測定によるシナジー的方法で検証可能か否かを研究した。重いヒッグス粒子の崩壊分岐比についてはQCDの高次補正を含めて計算し、モデルのパラメーターには摂動ユニタリティと真空安定性からの理論的制限を課し、高輝度LHCでの生成断面積を計算し95%CLでの期待排除領域を評価した。完全アライメントシナリオ以外では、このシナジー的方法がモデルを検証することに非常に有力であることを示し、論文にまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和2年度は、ヒッグス粒子の崩壊分岐比精密計算プログラムの発展に繋がる「拡張ヒッグスモデルに含まれる重いヒッグス粒子の崩壊過程の研究」を行った。その中でTHDMのパラメーターに対するリーディングオーダーの摂動ユニタリティと真空安定性の制限(理論的制限)についても慎重に研究し計算に取り入れ、おおむね計画通りに進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
標準理論の場合を参考にし、異なる対称性をもつ3種類のTwo Higgs doublet modelと2種類のHiggs singlet model での2体2体散乱の1ループ補正を計算し、摂動ユニタリティの高次補正の解析計算を完成させ、それぞれのモデルでの研究を論文にまとめる。そして、THDMとHSMの摂動ユニタリティと真空安定性の制限を評価するFortranコードを作成し、既存のヒッグスボソンの崩壊分岐比計算プログラムに結合させる。更に、付加的な重いヒッグス粒子の崩壊分岐比(H→hh, H→WH+, H→ZA)を電弱量子補正の効果とQCD補正を含めて計算し、計算プログラムに取り入れる。 計算プログラムが完成したら、各模型の発見された125GeVヒッグス粒子の各種崩壊過程(h→bb, h→cc, h→ττ, h→WW, h→ZZ, h→γγ, h→gg, h→gγ)の崩壊分岐比の標準理論値からのずれと未確定パラメーター依存性(付加的ヒッグス粒子の質量、ヒッグス場の混合パラメーター等)を計算プログラムを用いて詳細に調べる。特に研究目的に記した対称性の極限で各種崩壊過程がどのような振る舞いをするか調べる。各種崩壊過程の標準理論値からのずれの振る舞いのパターンで、対称性の識別を行う。また、そのずれは将来の精密測定で識別可能かどうかを明らかにする。更に、付加的な重いヒッグス粒子達の崩壊分岐比の高輝度LHC実験による探索可能領域を精査する。付加的ヒッグス粒子の直接探索と発見されたヒッグス粒子結合定数精密測定、そしてパラメーターに対する理論的制限の3方向からの現状の制限、将来の探索領域、対称性の識別方法を研究し、論文にまとめる。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症感染拡大防止に伴う措置により、共同研究の研究打ち合わせのための出張と、国際会議や学会等での研究成果発表のための出張を取止めたため、次年度使用額が発生した。 研究打ち合わせのための国内出張(大阪大学など)(130,000円×3回=390,000円)、研究発表のための国内学会・研究会への参加(80,000円×2回=160,000円)で、旅費におおよそ550,000円使用する。物品購入は、デスクトップパソコン(300,000円)、グラフ作成のためのソフトウェア(300,000円)、論文等印刷のためのトナー代(100,000円), 書籍等を計画している。
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Research Products
(2 results)