2021 Fiscal Year Research-status Report
Frontiers of QCD/hadron physics pioneered by extreme finite volume
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20K14476
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
鈴木 渓 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, 博士研究員 (40759768)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | カシミール効果 / 有限体積効果 / 場の量子論 / 格子場の理論 / ディラック半金属 / ワイル半金属 / フォノン / マグノン |
Outline of Annual Research Achievements |
カシミール効果とは、真空の量子揺らぎが空間的な境界条件の存在によって変化するために生じる物理現象の総称であり、具体的な例として、二枚の平行板を微小な距離で並べた際に生じる引力や圧力の発生はよく知られている。このような、光子(フォトン)場によって生じるカシミール効果の存在は、1990年代以降に実験的に実証されており、近年ではナノフォトニクス分野における工学的な応用も提案されている。 カシミール効果はボーズ粒子やフェルミ粒子などの粒子の種類にかかわらず様々な量子場に対して起こることが理論的には示せるが、通常は相対論的粒子に対する効果であり、非相対論的粒子において消失することが(素朴な計算では)予想される。この予想は、量子場に対するゼロ点エネルギーの有無や粒子の性質を特徴づける分散関係の形状に基づいて決まるが、実際に非相対論「的」な性質を持つ量子場に対してカシミール効果が本当に消失するのか否かはそれほど自明でない。 2021年度は、2020年度に提案した格子正則化の手法を用いることにより、格子上で非相対論的性質を持つ様々な粒子に対するカシミール効果の性質を予言した。特に、境界条件間が長距離の場合にはカシミール効果が消失するが、ある境界条件が課された際、近距離領域において有限のカシミール効果の「名残」が残る例を発見した。これは従来の素朴な予想に反する結果であったため、本研究ではこの現象を"Remnant Casimir effect"と命名し、詳細な検討を行った。以上の研究成果を原著論文としてまとめている段階である。 格子上のカシミール効果は、ナノリボン構造をとる2次元物質や薄膜化された3次元物質中の格子自由度に対して生じることが期待される。特に、(特殊なバンド構造を持つ)二層グラフェンやディラック/ワイル半金属、磁性体などを記述する有効模型を用いた解析は将来的な課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2020年度に提案した「格子正則化によるカシミール効果の導出」手法を応用することにより、当初の研究計画にはなかった方向へ研究が発展したため。特に、2021年度に明らかにした非相対論的自由度に対するカシミール効果は、これまでにほとんど注目されてこなかった研究対象であるため、(格子系に限った議論ではあるが)その理解が進んだことは計画以上の進展と評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度に得られた研究成果により、格子上のカシミール効果の定性的な理解が飛躍的に進展した。格子上の自由度は、ディラック/ワイル半金属におけるディラック/ワイル電子や、金属中のフォノン、磁性体におけるマグノンなど様々な格子系に現れるため、そのような系を記述する有効模型を用いて、カシミール効果の定量的な性質や新現象の解明を進める予定である。さらに、そのようなカシミール効果を実験的に検出するための特徴的な物理量の予言や、エレクトロニクス/スピントロニクス分野への工学的な応用まで議論できるとよい。
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Causes of Carryover |
2020年度に引き続き、2021年度も新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行によって、参加を予定していた国際会議・国内会議の開催形式がオンライン形式に変更になる等の理由により、旅費の支出額が当初計画よりも少額となったため、次年度使用額が生じた。次年度使用額は、2022年度分研究費と合わせて、2022年度に開催予定の国際会議・国内会議への参加に係る費用として使用を予定しているが、開催状況によっては、使用計画の再検討を行う。
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Research Products
(11 results)