2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K14478
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
山口 康宏 名古屋大学, 理学研究科, 助教 (00733932)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | エキゾチックハドロン / ヘビーハドロン / ハドロン間相互作用 / メソン交換力 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は以下の研究課題について成果をあげた。 (1)ヘビーメソン-核子相互作用とエキゾチックな束縛状態の解析: 本研究ではメソン交換描像を用いた現実的核力模型に基づき、ヘビーメソン-核子相互作用の構築が行われた。重陽子の形成に重要なパイオン交換力のテンソル力に加え、2核子散乱のアイソスピン0と1チャンネル両方で重要となるシグマメソン交換を加えた。構築した相互作用を用いてヘビーメソン-核子束縛状態の解析が行われ、J^P=1/2^-状態のアイソスピンI=0,1両方のチャンネルに束縛状態があることを予言した。I=0状態ではテンソル力が引力生成に重要な働きをすることがわかり、重陽子のような状態として得られた。一方I=1状態ではシグマ交換力が支配的な役割をしていることが得られた。この解析により、ヘビーメソン相互作用の性質が調べられた。 (2)2ヘビーメソン束縛状態としてのダブルヘビーテトラクォークの解析:2ヘビーメソン間にメソン交換力を導入した、2ヘビーメソン束縛状態の解析を行った。この構造は、2021年にLHCb実験で報告されたTccテトラクォークの構造の候補として有力視されている。質量の実験値をinputとして相互作用模型のパラメータを決定し、2体束縛状態の性質が調べられた。シグマメソン交換による引力が支配的な働きをしていることが得られた。一方、重陽子形成に重要なパイオン交換力のテンソル力は、引力を生成するものの、主要な寄与ではないことが得られた。本研究の成果は実験で報告されたTcc状態の構造を理解する上で重要なものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究で議論されてきた長距離力・パイオン交換力に加え、中距離力で様々なアイソスピン状態の性質説明に重要なシグマメソン交換力を導入した相互作用構築が行われた。今回のヘビーメソン-核子系や2ヘビーメソン系におけるこれら相互作用項の役割が解き明かされつつあり、エキゾチックハドロン構造を理解する上で重要な成果を得た。当研究は概ね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は共鳴状態も含めた解析を行い、ヘビークォークスピン多重項構造について解析を行う。構築した相互作用によりヘビーメソン系の強い引力の存在が示唆された。これにより、束縛状態のみならず、閾値上に生成される共鳴状態の存在も期待される。これら束縛・共鳴状態は互いに無関係ではなく、重いクォーク質量の極限で縮退する「ヘビークォークスピンパートナー」である可能性がある。このヘビークォークスピン多重項構造を調べることは、ハドロン内部のヘビークォークスピン構造、軽いクォーク相関などを理解する上で重要である。このように、相互作用の性質のみならず、ヘビークォークスピン多重項構造からも、エキゾチックハドロンの性質解明を行う予定である。
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Causes of Carryover |
本年度もCOVID-19の影響で取りやめとなったりオンライン開催となった国際会議があったため、支出額が少額となり、次年度予算使用額が生じることとなった。次年度は多くの国際会議が通常に戻り、また国内出張もできるようになる見込みである。次年度使用額は国内・国際会議への出張、共同研究者との研究打ち合わせのための旅費等として使用する。
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