2022 Fiscal Year Research-status Report
Improvement of the complex Langevin method toward a solution of the sign problem
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20K14480
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
土居 孝寛 大阪大学, 核物理研究センター, 特任助教(常勤) (50804910)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 符号問題 / 複素ランジュバン法 / 原子核ハドロン物理学 / 物性物理学 / 冷却原子 |
Outline of Annual Research Achievements |
有限温度・密度におけるクォーク・ハドロンの性質やカラー超伝導相、カイラル非一様相などの性質を第一原理的計算で調べることは、非常に興味深い。しかし、これらの系では計算精度を著しく低下させる符号問題が頻繁に生じ、第一原理計算を進めるのか困難である。符号問題は未だ解決されていないが、複素ランジュバン法が解決法の候補として知られている。本研究は複素ランジュバン法が破綻する原因を詳細に調べて手法を改良し、符号問題が現れる系の第一原理計算に応用する事を目的とする。 2021年度には、1次元2成分フェルミオン系の計算が完了した。具体的には、2成分間の化学ポテンシャルに差があり符号問題が生じる系において、少数の成分のフェルミオン(ポーラロン)のエネルギーを測定した。我々の理論計算と既に知られている厳密解がよく一致しており、この系において複素ランジュバン法は機能することを示すことができた。 2022年度の研究実績として、2次元・3次元の計算コードを完成させた。また、このような高次元の計算をする上でフェルミオン行列の逆行列を計算する必要があるが、この計算を実行する上で有用な計算手法の候補としてSherman-Morrisonの公式を挙げ、この手法の有用性について調べた。 2023年度には、2次元・3次元と次元を上げ、符号問題が生じる冷却原子系における複素ランジュバン法による大規模理論計算を実行する。また、冷却原子実験結果と比較し、複素ランジュバン法の有効範囲を調べ、破綻する場合はその理由を探る。破綻する場合に、冷却原子実験結果との差を調べることで、複素ランジュバン法が失敗する場合でも正しい物理量を再構成する方法を開発する。最終的には有限温度・有限密度の格子QCD計算に応用したいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は計算コードを完成させることと、逆行列計算の手法開発に時間がかかってしまったが、2023年度には成果を出せる準備が整った。
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Strategy for Future Research Activity |
2次元系や3次元系など、1次元よりも高次元の2成分フェルミオン系の物理量を複素ランジュバン法で計算し、実験結果と比べる。複素ランジュバン法の性質上、実験結果とずれるパラメータ領域が生じると予想されるが、その領域の範囲、どれだけずれているか、ずれる場合の複素ランジュバン方程式のドリフト項の分布の変化などを定量的に調べる。特に、複素ランジュバン方程式のドリフト項の分布については、指数関数的に減衰すれば複素ランジュバン法が機能することがわかっているが、指数関数的に減衰しない場合に複素ランジュバン法が機能するかどうか、機能しない場合の厳密解とのずれについてはあまり調べられていない。1次元系など特殊な系では理論的な厳密解が知られているが、通常は厳密解がわからないので、厳密解として実験結果を活用するというのが本研究の特徴の1つである。技術的な最終目標は、複素ランジュバン法が予言できるパラメータ領域を広げることができるよう拡張することを目指す。手法が活用された暁には、有限密度におけるクォーク・グルーオン系や2次元格子上の強結合フェルミオン系などに応用し、中性子星の内部構造や高温超伝導体の性質の予言など、これまで理論的に予言することが難しかった系に複素ランジュバン法を応用する予定である。
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Causes of Carryover |
2022年度も新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から多くの研究会・学会がオンライン開催になり、現地に出張することがなくなった。そのため出張費が必要なくなり、2022年度予算は余ってしまった。ただし、今後は状況が緩和することが期待できるので、無理の無い範囲で研究会・学会の現地でのコミュニケ―ションを取り、研究を進めるための情報共有・議論を進めたい。また、逆行列計算をスムースに実行するためにハイスペックな計算機を買い、研究を円滑に進めるために予算を活用する予定である。
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Research Products
(3 results)