2020 Fiscal Year Research-status Report
Development of Ring Structure Forebaffles that Effectively Reduce Ground Signal Systematics in CMB Telescopes
Project/Area Number |
20K14483
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
Matsuda Frederick 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 特任研究員 (40867032)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 宇宙マイクロ波背景放射 / インフレーション / CMB / 光学 / バッフル |
Outline of Annual Research Achievements |
ビッグバンは時空の加速度的膨張(インフレーション)により生み出されたと推測されている。本研究は宇宙マイクロ波背景放射(CMB)の偏光Bモードシグナルの観測を通して、インフレーションの決定的証拠となりうる原始重力波を探る。CMB地上実験における大きな問題は望遠鏡のside-lobeから計測器に入る地形反射による偏光シグナル(迷光)汚染である。次世代地上実験では高い精度での系統誤差の制御が必須であり、この迷光はCMB観測の感度を制限する大きな系統誤差となっている。本研究ではCMB地上実験で新たな試みとなる、リングバッフル構造を望遠鏡のバッフルとして使用し、side-lobeの縮小による系統誤差の抑制効果を調べる。3年計画にて二台目のSimons Observatory望遠鏡にリングバッフルを実装する。現地での一台目望遠鏡と比較した実測データ、そして光学シミュレーションに基づきリングバッフルの地形反射シグナル汚染の抑制効果を計測し、CMB地上実験の飛躍的な感度向上を目指す。 2020年度では、二台目望遠鏡に搭載予定のリングバッフルの光学設計を行い、期待される系統誤差の抑制効果を精密な光学シミュレーションを通して計算を行った。一台目望遠鏡に実装されている従来バッフルの光学シミュレーション計算も行い、リングバッフルを搭載した場合のside-lobe縮小効果を定量的に解析した。望遠鏡に搭載してある別シールドと併用した場合の効果も計算し、より地形反射光による迷光汚染を抑制する効果が期待できることを確認した。 リングバッフルの内壁に使用する吸収材(黒体)の屋内VNA測定を完了し、効果的なバッフルの実現に必須である低い反射率を計測した。この測定結果を光学シミュレーションにフィードバックすることにより、より正確なシミュレーション計算を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度に予定していた二台目望遠鏡に搭載予定のリングバッフルの光学設計とリングバッフルの内壁に使用する吸収材(黒体)の屋内VNA測定も完了し、順調に進んでいる。望遠鏡バッフルの光学シミュレーションは当初の予定より進展しており、リングバッフルの期待される系統誤差の抑制効果を計算した。屋内VNA試験の測定結果を光学シミュレーションにフィードバックをし、より正確なシミュレーション結果も計算した。 新型コロナウイルスの影響により、一台目と二台目望遠鏡の国内外での全体の開発が遅れており、望遠鏡の観測地(チリ)への輸送も遅れている。それに伴いリングバッフルの製造は2021年度に予定している。だが従来バッフルを搭載する一台目望遠鏡の屋内試験は現在進行中であり、屋内試験での実測データを用いて、二台目望遠鏡に搭載するリングバッフルの抑制効果を実測データとシミュレーションを合わせることにより今年度に推定する予定である。この試験によりチリへの輸送前にバッフルの効果をある程度把握することが可能である。 国際共同実験の全体の遅れは生じているが、望遠鏡バッフルの開発においては光学設計・光学シミュレーション・屋内の光学測定などは順調に進んでいるため、本研究はおおむね順調に進んでいる。
|
Strategy for Future Research Activity |
2021年度には光学設計に基づきリングバッフルの構造設計を完成させ、製造も完了する予定である。一台目望遠鏡の従来バッフルの製造業者とも連携をとっており、二台目望遠鏡のリングバッフルの製造計画も現在進めている。一台目望遠鏡の屋内実験の結果をフィードバックし、必要に応じてリングバッフルの改良も進める。光学シミュレーションもより改良し、チリでの実測データとの比較解析に向けて準備する。 2022年度にはリングバッフルをチリへ輸送し、二台目望遠鏡に搭載する。現地での実測データをもとにリングバッフルの系統誤差の抑制効果を評価する。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響によりSimons Observatory実験の国内外の開発に遅れが生じており、望遠鏡のチリへの輸送も遅れている。そのため2020年度に予定していた望遠鏡リングバッフルの製造・発注を2021年度に行う予定である。現在製造業者と打ち合わせを行っており、望遠鏡バッフルの発注手続きを進めている。2021年度中には発注を行い、2022年度にはバッフルをチリへ輸送する予定である。 新型コロナウイルスの影響により、2020年度の国内・国際学会や国際共同ミーティングなどリモートとなったが、2021年度には徐々に国内外のミーティングが復活する予定である。旅費などは適宜学会やミーティングのために使用する。
|