2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of Ring Structure Forebaffles that Effectively Reduce Ground Signal Systematics in CMB Telescopes
Project/Area Number |
20K14483
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Research Institution | Japan Aerospace EXploration Agency |
Principal Investigator |
Matsuda Frederick 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 特任助教 (40867032)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 宇宙マイクロ波背景放射 / インフレーション / CMB / 光学 / バッフル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、宇宙マイクロ波背景放射(CMB)の偏光Bモードの観測を通して、インフレーションの決定的証拠となりうる原始重力波を探る。CMB地上実験における大きな問題は望遠鏡のside-lobeから計測器に入る地形反射による迷光汚染である。次世代地上実験では高い精度での系統誤差の制御が必須であり、この迷光は観測感度を制限する大きな系統誤差となっている。本研究では、CMB地上実験で新たにリングバッフル構造を望遠鏡バッフル技術として検討し、side-lobeの縮小による系統誤差の抑制効果を研究する。3年計画にて二台目のSimons Observatory望遠鏡に改良したバッフルを実装する。望遠鏡の実測データと光学シミュレーションに基づきバッフルの地形反射シグナル汚染の抑制効果を計測し、CMB地上実験の飛躍的な感度向上を目指す。 2021年度では、二台目バッフルの設計を改良し、観測に必要な光学性能を維持しながら、組み立て・保管・輸送・運用がよりしやすい設計へと変更した。十分な系統誤差の抑制効果を得るために、バッフルは最低でも1.7 m高さ・2.1 m直径の大きさが必要となる。同時に、運用のしやすさも考慮し、軽量な構造設計も必須である。リング構造を追加するためには、バッフルをより大きくする必要がある。望遠鏡上の支持構造が限られているため、より大きなバッフルを搭載すると構造的な安定性が損なわれ、振動による観測中の系統誤差が懸念されることが分かった。そのため、二台目バッフルの光学設計の最適化を行い、大きさを最小限に抑えつつ、観測に必要な光学性能を維持した光学設計へと変更した。輸送・運用を簡易化するためにバッフルを分割構造にし、全体の強度・固有振動数を高めるための補強構造も追加した。これらの改良により、一台目バッフルより光学的に安定し系統誤差の抑制効果がより期待できるバッフル設計を開発した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルスの影響により、2020-2021年度で予定されていた一台目と二台目望遠鏡の国内外での全体の開発が遅れており、望遠鏡の観測地(チリ)への輸送も遅れている。それに伴い二台目バッフルの製造は2022年度に予定している。だがこの期間に二台目バッフルの光学・構造設計を見直し、光学的により安定性が高く、そして運用がよりしやすい設計へと改良することができた。 従来バッフルを搭載する一台目望遠鏡の屋内試験は現在アメリカにて進行中であり、共通したバッフル構造部分の望遠鏡へのフィットチェックは終えている。一台目バッフルもチリへ輸送済みであり、2022年度中に一台目望遠鏡の観測を開始する予定である。一台目バッフルの実測データと光学シミュレーションを基に、二台目バッフルの性能を評価する予定である。 国際共同実験の全体の遅れに伴いバッフル製造自体にも遅れが生じているが、望遠鏡バッフルの開発においては、光学と構造設計の最適化と製造業者との打ち合わせが進んでいるため、本研究はおおむね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度には、改良した二台目望遠鏡用バッフルを製造し、二台目望遠鏡に搭載するためにチリへと輸送する予定である。2022年度中に観測を開始する一台目望遠鏡の実測データを基に、望遠鏡とバッフルの光学シミュレーションとの整合性を確認し、二台目バッフルの光学シミュレーションへとフィードバックすることにより系統誤差の抑制効果をより現実的に評価する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響により2020-2021年度でのSimons Observatory実験の国内外の開発に遅れが生じており、望遠鏡のチリへの輸送も遅れている。バッフル構造が大きく(1.7m高さ・2.1m直径)、実験室に長期保管するのが困難であるため、当初2020年度に予定していた二台目望遠鏡バッフルの製造・発注を2022年度に行う予定である。現在製造業者と打ち合わせを行っており、改良した望遠鏡バッフルの発注にむけて議論を進めている。 2022年度に発注し、バッフルをチリへ輸送する予定である。 新型コロナウイルスの影響により、2020-2021年度の国内・国際学会や国際共同ミーティングなどリモートとなったが、2022年度には徐々に国内外のミーティングが復活する予定である。旅費などは適宜学会やミーティングのために使用する。
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