2022 Fiscal Year Annual Research Report
ミリ波分光器を用いた暗黒光子探索―前人未踏の質量領域を切り拓く
Project/Area Number |
20K14486
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
安達 俊介 京都大学, 白眉センター, 特定助教 (80835273)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | ダークマター / ミリ波 / 新粒子探索 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は宇宙のエネルギーの1/4を占めるダークマターの正体を解明するために、ミリ波分光器を用いた新しい手法でダークマターを探す研究である。特に、本研究では High-scale inflation model で予言される「暗黒光子」と呼ばれる超軽量(~0.0001 電子ボルト)なダークマターの探索をおこなっている。この超軽量な質量領域では、暗黒光子の探索が今までなされておらず、かつ宇宙観測による間接的な制限が乏しく、前人未踏な領域といえる。 暗黒光子は光と弱く相互作用すると考えられており、それによって金属板表面で弱くミリ波に転換し、その転換光が金属板に対して垂直に放射される。この現象を利用して、金属板からくるミリ波を検出することで暗黒光子の検出が可能になる。生じる転換光の周波数は、エネルギー保存則によってダークマター1個の質量に1対1対応する。よって、転換光の周波数スペクトルを測定すると、ダークマターの質量に対応した鋭いピーク信号が観測されると予想されている。本研究では極低温まで冷やした低雑音で、かつ分光が可能なミリ波受信機を用いて暗黒光子由来の転換光の検出を目指した。 まず、周波数が18ー26.5 GHz のミリ波を測定可能な極低温受信機を開発して暗黒光子の探索をおこなった。残念ながら暗黒光子の検出には至らなかったが、宇宙観測の制限を1桁以上超える世界最高感度で探索ができた。最終年度にはさらに 10ー18 GHz に対応した受信機でも探索をおこなった。本探索の結果は来年度に論文として公表する予定である。また、それに伴って、将来の探索に向けたより高い周波数(200GHz帯)の受信機の開発、広帯域読み出しエレクトロニクスの開発もおこなうことができた。
|