2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of an ambient magnetic field compensation system in an accelerator facility for the neutron electric dipole moment measurement
Project/Area Number |
20K14487
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
樋口 嵩 大阪大学, 核物理研究センター, 特任助教(常勤) (90843772)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 素粒子物理学 / 基本的対称性 / 電気双極子モーメント / 超冷中性子 / 加速器 / 磁場安定化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、TRIUMF研究所における中性子電気双極子モーメント(Electric Dipole Moment, EDM)探索実験のための環境磁場補償システムの開発を行う。目標とする精度での測定にはサイクル毎10fT程度の極めて高い磁場安定性を要する。4層の磁気シールドと原子共存磁力計を用いることでこの要請を達成できる見通しであるが、実験装置が設置されるTRIUMFの加速器施設内には、主にサイクロトロンの漏れ磁場による、最大約350マイクロ・テスラの強い背景静磁場が存在し、磁気シールドに用いられる高磁化率材を飽和させてしまう恐れがある。そこで、本研究では、磁気シールドの性能を保つため、磁気シールドを取り囲むコイルによって加速器施設内の環境磁場を打ち消す、環境磁場補償システムを開発する。 これまでに、装置が置かれるTRIUMF研究所の実験エリアにおいて3次元磁場マップを取得し、それを組み込んだ有限要素法による磁場シミュレーションによって、およそ1000アンペア・ターンの起磁力のコイルが必要であることを明らかにした。 2021年度は、前年度までに行っていたシミュレーションをより詳細化し、磁気シールドの穴の影響の評価や補償磁場を作り出すコイルの位置や大きさの補償能力への影響の系統的な検討を行った。また、3か月半TRIUMFに滞在し、過去にTRIUMFの別の施設に設置された環境磁場補償システムを参考に、コイルの製作方針を決定し、環境磁場補償システムの概念設計を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルス感染症蔓延の影響から、TRIUMF研究所への渡航が制限されてしまったため、プロジェクトの進捗に遅れが生じている。2022年10月からのTRIUMFへの滞在中に、最低限必要な現地での情報収集と概念設計を終えることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、概念設計については、ほぼ終了し、環境磁場補償システムを保持するための構造物を含む、システム全体の詳細設計に進もうとしている。実験施設内への設置に関しては、磁気シールドの設置予定にも影響を受ける。現在、2023年5月に磁気シールドの建設が完了する予定であるので、それに合わせて、2023年前半までに必要な物品をそろえ、2023年秋ごろに磁気シールドと環境磁場補償システムの複合システムを組み立てることを目標としている。
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Causes of Carryover |
今年度主に必要になった費用はTRIUMFにおける打ち合わせと作業のための旅費であったが、旅費のための別予算を獲得することができたため、次年度へ持ち越すことにした。
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