2023 Fiscal Year Annual Research Report
Development of an ambient magnetic field compensation system in an accelerator facility for the neutron electric dipole moment measurement
Project/Area Number |
20K14487
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
樋口 嵩 大阪大学, 核物理研究センター, 招へい准教授 (90843772)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 素粒子実験 / 磁場安定性 / 加速器 / 磁気シールド / 超冷中性子 / 時間反転対称性 / CP対称性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、TRIUMF研究所における中性子電気双極子モーメント(EDM)探索実験のための環境磁場補償システムの開発を行う。目標精度での測定には極めて高い磁場安定性を要する。4層の磁気シールドルーム(Magnetically Shielded Room, MSR)と原子共存磁力計を用いることでこの要請を達成できる見通しであるが、実験装置が設置されるTRIUMFの加速器施設内には、主にサイクロトロンの漏れ磁場による最大約350uTの強い背景静磁場が存在し、MSRの高磁化率材ミューメタルを飽和させる恐れがある。そこで、本研究では、磁気シールドを取り囲むコイルによって加速器施設内の環境磁場を打ち消し、MSRの性能を維持する環境磁場補償システムの開発を目指してきた。 2023年の7月から11月にかけて、MSRの建設過程で各層の遮蔽効率を測定した。最終的なMSRの性能は設計値の1E5よりも一桁悪く、EDM測定のための要求性能を満たすために内側にミューメタル1層を追加する改造を決定した。環境磁場補償システムの組み立てはこのようなMSRの予想外の作業工程の延長により延期されたが、実機の1/4の巻数のプロトタイプを製作し、部品の組み立て方法やケーブルの結線方法の試験および励磁試験を行った。さらに、MSR最外層に接して設置されたMSRの消磁用コイルを活用し、サイクロトロン磁場がない条件下で、外部静磁場を加えた際に遮蔽係数がどのように変化するかを測定した。その結果、遮蔽係数の有意な印加磁場依存性(10A/m磁場に対し、30%の変化)を観測した。実機の環境磁補償システムでは異なる換算因子が予想されるが、この結果は、製作中のシステムが、サイクロトロン磁場のMSRへの影響を打ち消し、その性能を維持させられることを示唆する。これらの知見を踏まえ、2024年度中にシステムの完成と最適化を予定している。
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