2020 Fiscal Year Research-status Report
Development of independent mass determination method for interplanetary dust detector with piezoelectric PVDF film
Project/Area Number |
20K14493
|
Research Institution | Chiba Institute of Technology |
Principal Investigator |
平井 隆之 千葉工業大学, 惑星探査研究センター, 研究員 (30737888)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 圧電性PVDFフィルム / 固体微粒子 / 宇宙塵 / 超高速衝突 / 自由落下衝突 / 表面波 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はCOVID-19の影響により本来予定していた国内外での超高速衝突実験が制限・延期されたため、代替方法として微粒子の自由落下衝突実験を可能な治具の設計と構築、過去に取得済みの予備実験データの追解析と表面波センサを組み合わせた質量独立推定方法の検証を行なった。 自由落下実験については、ピンセットで取り扱いが可能な直径0.3 mmから数mmのステンレススチール製およびアルミナ製の微粒子を調達し、それらを到達速度1, 3, 5 m/sで衝突するよう長さを調整したアルミ製パイプをスタンド治具に組み込んだ実験治具を組み上げた。微粒子の衝突速度測定と衝突時の挙動確認のために、高速マクロ撮像が可能なカメラの仕様を検討し調達した。また、信号データ取得に必要なオシロスコープや信号読み出し回路用電源など必要な測定装置の仕様検討・調達を行い、超高速衝突実験の代替手法として自由落下実験を実施可能な環境を構築した。 表面波センサを組み合わせた質量独立推定方法とは、本来想定していた特定の信号周波数に注目するものとは異なる手法で、PVDFフィルムセンサの表面に小型のPVDFフィルムセンサを貼り付け、本体であるフィルムセンサ表面を伝わる弾性波由来の信号を取得し、本体センサの信号と表面波センサの信号の感度較正式の連立方程式から質量と衝突速度を独立に推定する手法である。周波数に着目した予備実験の副産物として既にデータを取得しており、その追解析から質量を1桁程度の精度で独立推定可能である見込みが得られた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本年度はCOVID-19の影響により本来予定していた国内外での超高速衝突実験の制限・延期を余儀無くされたことが、研究の遅れの大きな理由である。特に米国・マサチューセッツ工科大学で予定していたレーザー微粒子加速実験については、2019年11月に実施したのを最後に現在まで完全に停止してしまっている状況である。国内の二段式軽ガス銃実験についてはマシンタイムの実施そのものは最小限の中止で済んでいるものの、実験に参加可能な人数の制限により実験の効率は従来よりも低下している。また、別の探査プロジェクトに供するフライト品PVDFフィルムセンサの較正に新たな課題が見つかったこともあり、本研究課題に充てる予定であったマシンタイムを削減せざるを得ない状況となったことも大きく影響している。 既に予備実験においてデータを取得していた表面波センサを用いた質量独立推定方法の有効性をある程度検証できたことで、一定の成果は出せていると考えているが、本来の特定信号周波数に着目した質量独立推定方法については思わしい進捗が得られなかったため、研究計画としては遅れが発生していると言わざるを得ない状況である。
|
Strategy for Future Research Activity |
COVID-19の影響はワクチン接種により収束に向かっていくと期待しているが、当面の研究環境には大きな変化はないことが想定される。そこで2020年度は代替実験環境の構築と過去データの追解析およびそれによる表面波センサを用いた質量独立推定法の実現性の予備検証というバックアッププランを進めるための準備段階となったが、今後もこの2つのアプローチを主軸に研究課題を遂行していくことで研究目的を達成したいと考えている。具体的には、メートル毎秒という低速度領域で衝突粒子の質量にのみ依存する特定周波数が存在するか自由落下実験により検証することや、表面波センサを用いた実験データの追加取得により質量独立推定法の実現性を実証し、研究成果として論文発表等まで持っていきたい。 また研究開始当初の目標としては、実際の搭載機会を視野に入れた信号処理回路開発も含めた試作機の完成までを掲げていたが、惑星間ダスト等宇宙の固体微粒子観測用PVDFフィルムセンサの基礎研究と割り切ることで、予定している研究期間内での目標達成とすることも想定している。
|
Causes of Carryover |
当該年度使用額として最も大きなオシロスコープの購入について、デモ品を購入できたことで費用を大幅に削減することができたため全体の使用計画が大きく変更され、その結果としてわずかであるが今回の次年度使用額が発生した。次年度の使用計画は、主に実験用センサ供試体の追加購入、信号読み出し回路の試作発注を想定している。
|