2020 Fiscal Year Research-status Report
未知のCP対称性の破れ探索のための、中性子偏極デバイスの開発
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20K14495
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
奥平 琢也 名古屋大学, 理学研究科, 助教 (40826129)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 偏極中性子 / CP対称性の破れ / 中性子偏極デバイス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は複合核を用いたCP対称性の破れの探索実験のために中性子偏極デバイス:3Heスピンフィルタを開発することを目的とするものである。このために性能が良い、3Heガス厚 70atmcm程度の大型3Heスピンフィルタを作製する。 本年度ではまず、3Heスピンフィルタの作製方法を最適化するためにJ-PARCに構築された真空システムを用いて試作機を6個程度作製した。これらのうち、5個の3Heスピンフィルタが150時間程度の十分に長い3He偏極緩和時間を持つことを確認した。この中でもっとも3Heガス厚が大きい27atmcmの3Heスピンフィルタを既存のレーザーシステムで偏極させたところ、80%の高い3He偏極率を達成可能であることを確認した。これらの成果から、まだ作製方法に改良の余地はあるものの、性能の良い3Heスピンフィルタの作製に関するノウハウはある程度蓄積されたと考えている。また、この3HeスピンフィルタをJ-PARCの中性子ビームラインANNRIで実際に使用し、139La, 117Sn原子核の偏極中性子吸収反応に伴う、γ線放出角度分布測定実験を行った。このときの実験では1eV程度の中性子に対して40%程度の中性子偏極率を得ることに成功した。 熱外中性子偏極用の本番機作製のために、60atmcm 3Heスピンフィルタ用の大型ガラスセルを作製した。同時に、本3Heスピンフィルタを偏極させるためのレーザーシステムを設計、作製した。来年度から大型ガラスセルに3Heガスを封入し、新型レーザーシステムを用いて性能評価を行っていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに3Heスピンフィルタ作製方法に関するノウハウは概ね蓄積されたと考えられる。加えて作製した3Heスピンフィルタを実際に使用して物理実験を遂行できたことから、3Heスピンフィルタの開発は順調に進展していると考えられる。来年度以降の開発の準備も概ね順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度で3Heスピンフィルタの作製方法が蓄積され、本番機用の大型ガラスセルの作製にも成功したことから、来年度は大型ガラスセルに3Heガスを封入し、レーザーシステムとともに大型3Heスピンフィルタの性能評価を行う。このためには大型3Heスピンフィルタの偏極を保持できる大型のコイル、3Heスピン反転システムを開発する必要があるため、これら周辺機器の設計、開発を行っていく。
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Causes of Carryover |
当初作製予定であった、大型ガラスセルが予想よりも安価に作製する事ができたため、一部未使用額が発生した。本未使用額は大型コイルおよび3Heスピン反転システムの性能向上のために使用する予定である。
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Research Products
(4 results)