2020 Fiscal Year Research-status Report
初期宇宙観測に特化した多色同時検出器で拓くインフレーション期の宇宙
Project/Area Number |
20K14502
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
長崎 岳人 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 研究員 (00752346)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 宇宙マイクロ波背景放射 / 電波 / MKID |
Outline of Annual Research Achievements |
地上設置型の望遠鏡を用いて高精度な宇宙マイクロ波背景放射(CMB)の観測を行い、インフレーション仮説の検証とニュートリノ質量の解明という宇宙物理と素粒子物理の2つ謎に挑む。大幅に集積度を改善したMKID 検出器を開発し、現在カナリア諸島にて運用を行なっているGroundBIRD 実験に搭載してCMB観測を行うことで宇宙初期の姿に迫ることである。検出器として、フィルターバンク型直線両偏波観測用MKID カメラを開発し、集積度を改善する。周波数帯域をCMB観測用(145GHz 帯)と星間ダスト(220GHz)帯の2 帯域を同時に観測することで、B-mode 検出のための銀河からの全景放射を取り除くことを目指す。 2020年度は、研究計画に基づきCMBを観測するための145GHz帯と220GHz帯を受信するための平面アンテナの設計を行った。具体的にはHFSS電磁界シミュレータを用いて、平面アンテナとレンズによる光学特性を計算し、CMB観測に適したアンテナを開発した。また他の研究項目として、アンテナで受信した2つの周波数を分離するためのフィルターバンクの設計も行った。加えて、素子数を限られた空間に数多く設置することがこの研究の肝であるため、これらを可能な限りコンパクトな面積に抑えることが重要であることから、各コンポーネントの配置の最適化も合わせて実施した。加えて、本来は2021年度に行う予定であった、素子を評価するためのシステムの開発を2020年度内に開発を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の2020年度の研究計画では、前期に光を受信するアンテナ系の設計と受信した周波数を二つに分けるフィルターの設計を行い、後期にプロトタイプの阻止開発を行う予定であった。残念ながら、2020年度は素子を作成する理化学研究所のクリーンルームが安定して可動していない状況であったため、素子開発を行うことができなかった。また素子設計のシミュレーションの結果、より性能の改善を目指している。代わりに、2021年度以降に予定されていた開発した素子の評価システムの開発を実施しており、研究の遅れを最小限に留めている。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度はプロトタイプ素子の開発を行う。2021年度は、素子開発を行うクリーンルームが運用予定であり、開発が可能という見積もりである。また、2020年度の成果であるアンテナとフィルターの設計においても、一部改良を行いさらなる観測効率の改善を予定している。3年目、ならびに4年目に予定されている観測時間をより効率化することを目的として、今年度の実験室での評価システムの開発の運用を開始する。
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Causes of Carryover |
素子開発を行う共同利用先のクリーンルームでの素子作成が困難であったため、これに関連する物品を購入を行わなかった。また、旅費に関しても使用目的が素子開発を行う機関への移動費用であり、使用する必要がなかった。 これらの使用目的は2021年度以降に使用する予定であり、使用目的も同等である。
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