2020 Fiscal Year Research-status Report
High precision spectroscopy of francium atoms using microwave pulses
Project/Area Number |
20K14503
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
早水 友洋 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器科学研究センター, 基礎科学特別研究員 (00831009)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | フランシウム / アクチニウム / マイクロ波 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、不安定原子であるアルカリ重元素・フランシウム(Fr)を、レーザー冷却・トラップ技術を用いて捕獲し、マイクロ波を用いて精密分光を行うことを目標としている。そこで、今年度は特に不安定原子とその原子源を取り扱うための環境整備、装置の設計、および分光に必要な光源の設計・整備を行った。 本研究において用いる予定の221Fr(半減期4.7分)は、225Ac(半減期9.9日)のアルファ崩壊によってその反跳粒子として生じる。221Frを含め、225Acの崩壊系列にはα線崩壊核種が多く、線源を大気に接触させることは危険である。安全を確保しつつ円滑な実験遂行を可能とするため、225Acの化学処理を行う実験室の近隣に、新たに本実験のための実験室の立ち上げを行い、光学台等の搬入を行った。また、本実験室の規則・条件に適合しつつ、超高真空領域に225Acを導入する真空チェンバーの設計と、これらの安全な運用方法を検討した。 分光に用いるレーザー光源・マイクロ波源については、Fr原子を冷却するためのレーザーを立ち上げるための環境整備を行い、東北大より移設した718 nm光源の立ち上げ開始につなげた。さらに、221Fr原子の7S基底状態の超微細構造遷移に相当する18.6 GHzを発振するマイクロ波源についての検討・設計を行った。波源のコスト抑制と信頼性担保を両立させるため、ルビジウム(Rb)原子における同様のマイクロ波分光実験で用いた信号発生器に、周波数逓倍機と低ノイズ増幅器を複数段組み合わせて18 GHz超を発振させることに決め、コネクタ・ケーブルによるパワー減衰も想定して、信号発信器からアンテナまでの構成要素を検討し、順次導入した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究に必要な装置として、221Frを捕獲するためのレーザー冷却・トラップ装置、レーザー光源、マイクロ波源、それに221Frを崩壊先として持つ225Ac源があり、昨年度はこれらそれぞれについて検討・設計・調達を行い、本研究の実現に向けた環境整備を進めた。しかし、生じてきた課題として、新しく立ち上げた実験室と現在光源のある実験室の間で、レーザー光源の共有・移送を行う必要が生じていることが挙げられ、対応策を検討している。また、225Acの需要が世界的に高まっており想定よりも入手性が悪いことから対応策も求められている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度以降も、精密分光実験における測定精度向上のために必要な実験装置の整備を進める。 分光実験時のシグナル・ノイズレシオ比や、統計精度を改善するためには、実験領域への221Fr供給個数が鍵となる。そこで、真空チェンバー内に高い線源強度を持つ225Acを安全に導入し、かつ、効率よく221Frを収集するための実験手法の確立を目指す。これらの実験装置の整備にあたっては、ルビジウム(Rb)やセシウム(Cs)といった安定アルカリ原子を用いて、放射性元素の225Acや221Frを用いない形でのリハーサル実験を十分に行う。これらの点は、実際に225Acを導入した際に効率よく実験を進めるためにも重要である。 また、これらと並行し、レーザー光源・マイクロ波源を準備して性能評価を進め、分光実験に向けた準備を整える。
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Causes of Carryover |
当初は高額となることが想定されたマイクロ波源の構成要素の購入に使用する想定だったが、マイクロ波源およびレーザー光源関連整備の費用として早急に必要だった分以外については繰り越し、昨年度より新しく立ち上げている実験室の条件に適合するよう検討を進めてきた、225Acを導入する真空チェンバーの製作に主に充てる予定である。
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Research Products
(1 results)